内容説明
自伝的長篇『未知よりの薔薇』を出版したあと、著者の心は、次なる時間サイクルへではなく、その振り出し―二十歳代へと帰っていった。古い三冊の「詩作ノート」の埃を払うと、そこに強烈な孤独と意思につらぬかれた若き日の詩人の自我像が浮かびでてきた。詩を書くことで彼は幻視することを学んでいたのだ。「いまや若き詩人の影はひそやかに私の心に浸透し、未知なる光の中で揺らめいている」と述懐するスペイン詩・文学・ミスティシズム専攻の、安倍三〓による陰影濃きエッセイ「失われし詩人を求めて」を巻末に附し、六十年の歳月をこえて立ち昇る千曲川の瀬音との共振を聞く。
目次
ノート1 千曲川のほとりにて(一九六一年/29歳)
ノート2 詩作十年(一九五二‐六二年/20‐29歳)(春堤;巫女;不在の渚に;夜が日々のなかを;昼をむなしく;花びら;裏景色;予感;気配;波の弦―ポール・クレーに寄す;飛箭―愛のはじめ)
ノート3 詩作のための断章(一九五九‐六一年/27‐29歳)(比喩;“Trahir”の一言をめぐって;川端康成『雪国』;ノートの最初の部分を読みかえして;詩と生;エッセイの形式について;夜の公園から;ある夜;ある対話;私の美術鑑賞―宋元画を観る;波動(詩)
石庭をめぐって
もし明日死ぬるとしたら)
失われし詩人を求めて(青春の影;鏡に映す自己;千曲川の瀬音;詩と夢と;見いだされし詩人)
著者等紹介
竹本忠雄[タケモトタダオ]
1932~。文芸評論家。東西文化交流を主軸に多年、日仏両国語で創造的活動に従事。特にA・マルローと霊性的日本との契り、皇后美智子さまの御歌の仏訳紹介で深層の相互理解に資した。かたわら、目に余る外地の反日メディアに対して、日本文化防衛戦を提唱し、単身、半生にわたって第一線で活躍した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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