内容説明
『古事記』『竹取物語』『うつほ物語』『伊勢物語』などの史書や物語、さらには説話集や唱導、説経など日本古典文学に登場する様々な物語には、孝子譚(儒教の重要な徳目である親孝行に関する説話)や韓朋譚(横暴な皇帝に苦しめられる夫婦の悲恋の物語)などの中国の古伝承の影響を認めることができる。これら中国の古伝承は、早く奈良時代には日本に伝来し、日本人にも旧知の物語となっていた。日本古典文学において新たな物語が創造される際に、これら旧知の物語はいかなる影響を与えたのか―。東アジア諸地域の資料を博捜し、比較文学的視点より日本古典文学と中国の古伝承の影響関係を追及、物語形成の局面を描き出す。
目次
1 日本古典文学と中国孝子譚(日本古典文学と中国孝子譚―本書への導入;“忠と孝との鬩ぎ合い”と中国孝子譚―『経国集』対策文から平家・近松へ)
2 「竹取」をめぐる中国孝子譚―原穀譚・董永譚(「竹取翁歌」臆解―現存の作品形態にもとづく主題の考察;『竹取物語』と孝子董永譚―日中天女降臨譚における『竹取物語』位置づけの試み)
3 “継子いじめ”の物語と中国孝子譚―舜譚・伯奇譚(説経「しんとく丸」「あいごの若」の成立と中国伝来の“継子いじめ譚”―クナラ太子譚と舜譚・伯奇譚の接合による物語形成の可能性について;『うつほ物語』忠こその“継子いじめ譚”の位相―『孝子伝』の伯奇譚・クナラ太子譚との比較考察から;“継子いじめ”の物語と中国文学―『うつほ』忠こそ・落窪・住吉の成立を考えるために;古典文学における“継子いじめ譚”の展開と漢土の文学―比較から見えてきた流れ;漢語「人子」と和語「人の子」―古代日本における“孝”に関わる漢語の享受をめぐって)
4 日本古典文学と中国の古伝承―物語形成の諸相(古代浦島説話における「玉手箱」開箱と韓朋譚―中国尉犁県出土「韓朋賦」断簡・ベトナム瑤族民間古籍『韓朋伝』に見える開箱の記述との比較考察;『伊勢物語』梓弓章段と韓朋譚―「弓矢」の「血書」に込められた女の誠心;説経「をぐり」の餓鬼阿弥蘇生譚と元曲「鉄枴李」―説経の物語形成方法に関する試論)
著者等紹介
三木雅博[ミキマサヒロ]
1954年和歌山県生まれ。大阪市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。梅花女子大学文化表現学部日本文化学科教授。博士(文学)。専門は日中比較文学・平安朝漢文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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