内容説明
ヨーロッパにおける日本学は長い伝統を有しており、ハイレベルかつバラエティに富んだ視角は、世界規模での学的影響を与え続けている。そのヨーロッパ日本学の最先端を伝える研究集会が、1973年設立されたEAJS(ヨーロッパ日本研究協会)による国際会議である。本書では、2021年に開催された同集会における日本古典文学を考えるための新視点を提示する充実のパネル4点を収載。日本古典文学を世界にひらいていく研究視角、方法論のパイロットケースを提示、EAJSの歩みや参加のためのhow toも示し、これからの日本研究・日本学の未来を構築するための手引きとなる貴重な一書。
目次
第1部 『源氏物語』のパトロン・藤原道長と紫式部の“戦略”(『源氏物語』の勝利―「絵合」巻における主家賛美の方法と紫式部(横溝博)
「源氏」の物語という“企て”―藤原道長と紫式部と「作り手」の人々(中西智子)
藤原道長の影の元で―『紫式部日記』における摂関政治の方法と中宮サロンの営みの意義(ネグリ・カロリーナ))
第2部 “平安文学”の歴史的構成―再発掘される「既成事実」(『枕草子』本文の受容と変容―諸本間の本文異同と「女」「女房」「乳母」をめぐる記述の差異から(山中悠希)
中世源氏学の心理的転換―宗祇流の性格を求めて(ノット・ジェフリー)
「つくりものがたり」の位相(小川陽子))
第3部 写本研究の未来―マテリアリティー、テキストマイニング、データ基盤の構築(書誌学的本文研究の未来―「定家手沢本源氏物語」を事例として(佐々木孝浩)
変体仮名を用いて写本の書写者と書写年代に迫る―その方法と事例(齊藤鉄也)
大規模画像蓄積からデータ駆動型の研究へ―EAJS 2021における特別企画The future possibilities of DH in Japanese Studiesの報告から(海野圭介))
第4部 文化資本の所有者―近世の武士社会における教養人の交換と使用について(豊臣秀吉と『源氏物語』(新美哲彦)
柳沢吉保の文化資本としての女性たち(ローリー・ゲイ)
異言語を話す―日本の大名や禅僧における唐話の意味、一六六一~一七一一(クレメンツ・レベッカ))
著者等紹介
横溝博[ヨコミゾヒロシ]
1971年生まれ。博士(文学)。東北大学大学院教授。専門は中古・中世物語文学
クレメンツ,レベッカ[クレメンツ,レベッカ] [Clements,Rebekah]
1979年生まれ。博士(ケンブリッジ大学)。ICREA Professor,Department of Translation,Interpreting and East Asian Studies,Autonomous University of Barcelona。専門は日本史・日本文学史
ノット,ジェフリー[ノット,ジェフリー] [Knott,Jeffrey]
1980年生まれ。博士(スタンフォード大学)。国文学研究資料館助教。専門は室町後期~戦国期の古典学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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chisarunn