内容説明
宗教と文学の両面から、様々な読まれ方をしてきた『今昔物語集』。多くの文学者や研究者が説話の宝庫として注目することで、『今昔物語集』は「古典」となったと言える。本書では、天竺説話の舞台でもある須弥山世界観の検証、これまで本格的に検証されていなかった天竺の無熱池論、『大唐西域記』など東アジア漢文諸資料から、図像資料などともあわせて、その表現過程の変遷について検証する。また、中国古典や漢訳仏典を博捜し、『今昔物語集』を世界文学としての面から新たに位置づけようとした南方熊楠の方法論を、『太平広記』や『夷堅志』、『聊斎志異』への書き込みなどから解明する。
目次
今昔物語集の東アジア世界はどのように形成されたか
第1編 須弥山と天竺の説話世界―仏伝から玄奘へ(須弥山と天上世界―ハーバード大学所蔵『日本須弥諸天図』と中国の『法界安立図』をめぐって;東アジアの須弥山図―敦煌本とハーバード本を中心に;須弥山と芥子―極大と微小の反転 ほか)
第2編 説話の受容と変容―聖人から天狗へ(『今昔物語集』における「聖」「聖人」の用語意識;日本中世の孔子説話―『今昔物語集』を中心に;『今昔物語集』における僧の天界往還夢説話 ほか)
第3編 南方熊楠と説話世界―説話の近代(南方熊楠の比較説話をめぐる書き込み―『太平広記』『夷堅志』と『今昔物語集』とのかかわりを中心に;南方熊楠の書き込みに関する研究―『太平広記』を中心に;南方熊楠と宋代の『夷堅志』―熊楠の書き込みを中心に ほか)
著者等紹介
高陽[コウヨウ]
1981年生まれ。清華大学人文学部外文系准教授。専門は日本と東アジアの説話文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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