内容説明
日本中世において数多く制作された仏教絵画のなかで、類例のない図様を持ち、制作当時とは異なる名称で呼ばれたり、別の信仰の文脈で語られてきたりした経緯をもつ、特異な仏画が存在する。これらはどのような意図で制作され、何を意味しているのか。そして、なぜ多種多様な形態や伝説を持っているのか。とりわけ「童子・死・聖地」にまつわるこれらの仏画や垂迹画を丹念に読み解き、図像的特徴や成立背景、制作意図を明らかにする。さらに、これらの仏教絵画が制作された時点における、伝承や説話からの影響関係、受容の様相を探る。美術史学・説話文学・民俗学研究など隣接諸学に寄与する研究成果。
目次
第1部 仏画と垂迹画における童子像―神の家の小公達(粉河寺の童男行者信仰―フリア美術館蔵伝聖徳太子修業像を中心に;春日の赤童子信仰;童形の日吉十禅師像 ほか;熊野曼荼羅の切目王子―神々のヒエラルキー;越前系の白山垂迹曼荼羅―遊行寺本と国上神社本)
第2部 死をめぐる図像(ボストン美術館本菩提樹像は何を表すものか;法華寺蔵阿弥陀三尊及童子図はどのように掛けられたか;金戒光明寺蔵地獄極楽図屏風はどのように使われたか ほか)
第3部 中国の霊山信仰から日本へ―観音と霊地信仰(長沙馬王堆漢墓出土の帛画はなぜT字形状か;須彌山石とは何を表したものか―水源伝説としての崑崙山;日本における三山信仰―三山もしくは三峯という構成の根拠は何か ほか)
著者等紹介
山本陽子[ヤマモトヨウコ]
1955年東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科(美術史)博士課程後期単位取得。博士(文学)。東邦音楽大学・明星大学・跡見学園女子大学・早稲田大学・東京純心女子大学・多摩美術大学・一橋大学大学院・お茶の水女子大学等非常勤講師を経て明星大学教育学部教授。専門は日本中世絵画史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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