内容説明
皇帝・国君の妻妾が住まい、再生産が行われる場である「後宮」。ドラマや漫画、ゲームなどにもたびたび取り上げられ、今なお人々の関心を集めるが、その実態は、国・時代によって変化し、多様性に富んでいた。「後宮制度」の規範となり、儒教に基づく礼制に即しつつも、理念と現実の間で揺れ動き、また民族や時代によって変化し続けた中国。中国礼制を積極的に受容しつつも独自性を色濃く残した朝鮮。天皇だけでなく武家政権にも“後宮”が設けられるなど、独自路線をひた走った日本。日中韓のみで語られがちな「東アジア」という枠組みを相対化するインパクトを有する大越・琉球。中国、朝鮮、日本やその他の各地域において、後宮のあり方、後宮を構成する人々(妃嬪、女官、宦官など)の制度、儀礼、文化、日常の実態などを幅広く考察し、東アジアの後宮における共通性と多様性に迫る。
目次
1 「典型的後宮」は存在するのか―中国の後宮(漢代の後宮―二つの嬰児殺し事件を手がかりに;六朝期の皇太妃―皇帝庶母の礼遇のひとこま ほか)
2 継受と独自性のはざまで―朝鮮の後宮(百済武王代の善花公主と沙宅王后;新羅の后妃制と女官制 ほか)
3 逸脱と多様性―日本の後宮(皇后の葬地―合葬事例の日中比較を中心に;日本・朝鮮の金石文資料にみる古代の後宮女性 ほか)
4 広がる後宮―大越・琉球(中世大越(ベトナム)の王権と女性たち
古琉球の神女と王権)
感想・レビュー
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よっち
31
中国、朝鮮、日本やその他の各地域において、後宮のあり方、それを構成する人々の制度、儀礼文化、日常の実態などを幅広く考察した一冊。漢代・六朝期・北魏・唐・契丹や明・清時代の後宮や唐・宋時代の宦官、百済・新羅・高麗・朝鮮時代の後宮、古代から中世、近世に至るまでの日本の後宮と将軍家の大奥、琉球やベトナムの制度がどうだったのか、それがどのように変化していったのかを取り上げていて、後宮制度の規範となった中国も時代によって変化があって、地域によってもいろいろ独自の進化を遂げていったことが伺えてとても興味深かったです。2023/10/19
さとうしん
19
保科論文では漢代の後宮が厳密な男子禁制ではなかったということとそれに関連して後宮での宦官の位置づけを問う。この議論が妥当だとすれば、東海林論文での日本の後宮が比較的自由で開放的だったという評価も多少変化するだろうか?毛立平論文の清朝の妃嬪の昇進・降格の議論は宮廷ドラマの鑑賞に役立ちそう。清朝と比べて明朝の後宮は皇后の廃位や寵姫がのさばったりということが頻繁に起こったという話には笑ってしまったが。朝鮮や日本の後宮についてもかなり充実しているが、江戸の大奥についてはもう1章程度欲しかったところ。2023/06/30
秋良
18
最近は後宮を舞台にしたミステリーや何やらが流行っていて、果たしてそのイメージは正しいのか?と前書きに書かれている。後宮といえば女同士のドロドロ、男子禁制、宦官、というのが定番だけど、本場の中国でも時代や地域で男子OKだったり宦官と女官が結婚してたりしたらしい。遊牧民系の王朝では元々その民族が持っていた結婚制度が、中華の結婚制度に包括されていくのが面白い。皇妃や貴妃のランクアップやダウンはホストみたいだった。男女の機微を優れた筆致で著した紫式部は、宮中の恋愛模様を物凄く観察してたのかもしれない。2025/04/01
カコ
0
流し読み、創作の資料用に入手希望。2024/10/28