内容説明
近世の海防は「国防」か?近世後期、相次ぐ異国船の来航に対して、人々はどのように対応したのか。日本各地で構築された海防(海岸防備)体制に焦点を当て、藩と地域社会の両面からその実態を明らかにする。幕府に対する軍役としての海防と個別領主の領地を自衛するための自領海防との違いを考察するとともに、人びとがどのような意識で海防に従事し、既存の社会秩序がどのように変容していったのかを鮮やかに描き出す。幕藩研究に一石を投じる意欲作。
目次
第1部 「江戸湾海防」体制の成立(「江戸湾海防」体制の成立と関東譜代藩;岩槻藩房総分領の海防;房総諸藩の異国船情報ネットワークと海防体制;「江戸湾海防」と江戸湾防備担当藩)
第2部 海防と地域社会(彦根藩の海防と世田谷領;九十九里地域における組合村の海防;海防費用負担と地域―上総国山辺郡宿村一件を事例に)
第3部 海防思想と開国後の海防(水野浜松藩の自領海防体制と海防思想;安政期における噴火湾の海防と盛岡藩の分領化)
著者等紹介
清水詩織[シミズシオリ]
1985年千葉県松戸市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。現在早稲田大学教育・総合科学学術院、東洋英和女学院大学人間科学部非常勤講師。博士(学術)。専門は日本近世史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sayan
11
近世の海防が軍事ではなく情報と関係性=伝言ゲームで維持された秩序という逆説が魅力的。異国船の接近に藩や村は命令でなく連携で動き村人や漁民、時に差別された人々が協力者となる。近世の安全保障は誰を誰が何からどう守るのか。村々の答えは意外に今日的である。藩の体面、村の義理、生活の糧、国家の理念/姿はない。誰かに何かを伝える防衛行動は現代インテリジェンスとは似て非なるが秩序維持に貢献。武力行使も国際法や自衛権でなく地域の論理で正当化。海洋国家であっても日本はシーパワーを持たぬ事実が戦略概念に静かなズレを持ち込む。2025/03/10
-
- 電子書籍
- ブラックキュービック(2)