内容説明
「祈り」という人類の普遍的・根源的営みのなかで構築された宗教は、それを信仰し担う人々により、多種多様な形をもって大切に守られ、伝えられてきた。また、一方で、人間と宇宙の根源的な在り方を規定する拠り所であるが故に、世界認識における解釈の対立を生じさせ、時には宗教間の軋轢や破壊を呼び起こすきっかけともなった。「宗教遺産テクスト学」とは、人類によるあらゆる宗教所産を、多様な「記号」によって織りなされた「テクスト」とみなすことで、その構造と機能を統合的に解明し、人類知として再定義することを目的とし、「コト」と「モノ」を一体化する新たな学術領域である。宗教遺産を人類的な営みとして横断的かつ俯瞰的に捉え、ひと・モノ・知の往来により生成・伝播・交流・集積を繰り返すその動態を、精緻なアーカイヴ化により知のプラットフォームを構築することで、多様性と多声性のなかに位置づける。文理を超えた三篇七部、四十の論考により示される、人類の過去・現在・未来をつなぐ新視点。
目次
第1篇 生成・動態の解明(源流と伝播のメカニズム―仏教文献・図像の源流および諸地域への伝播の解明;交流と集積の実態解明―東アジアにおける祈りの記録と記憶;日本における宗教美術の形成・伝来・復元)
第2篇 多様性・多声性の解明(「文化遺産」と「宗教」の歴史と理論―「宗教遺産テクスト学」の基盤構築に向けて;宗教実践の多様性と遺産化をめぐる諸問題)
第3篇 文理融合による新展開と未来への発信(文理融合型研究の新展開構築;宗教遺産先端アーカイヴ構築と発信)
著者等紹介
木俣元一[キマタモトカズ]
1957年生まれ。名古屋大学人文学研究科教授。専門は西洋中世美術史
近本謙介[チカモトケンスケ]
1964年生まれ。名古屋大学人文学研究科教授。専門は中世宗教文芸(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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