内容説明
田山花袋『蒲団』(1907)から小島信夫『各務原名古屋国立』(2002)まで、「私小説」の100年を辿り、成立と変遷、そして今後の可能性を提示する。認識する/される「私」から生まれる作品群を、「私探究」の文学として捉え直し、従来とは異なる観点から考察する。新しい「私小説」のためのガイドブック。
目次
私小説における「私」の問題
第1部 語りだされる「私」
第2部 変化する「私」
第3部 語り直される「私」
第4部 創られる「私」
第5部 韓国における「私」
「私」問題の普遍性
著者等紹介
梅澤亜由美[ウメザワアユミ]
法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻・博士後期課程単位修得満期退学。博士(文学)。現在、法政大学文学部・兼任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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田中峰和
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日本独特の文学形式でありながら、いまひとつ語られていない私小説。私小説には「破滅型」と「調和型」という二つの型がある。「破滅型」は、型破りな人生を送る人が、その人生や生活を描くもの。古くは田山花袋や太宰治、最近では西村賢太があげられる。普通の人にはまねのできない荒唐無稽さが魅力だ。「調和型」は、何気ない日常を描き、作者の人間性が直接的ににじみ出るもの。本書で取りあげた志賀直哉などもこれにあたる。かつて日記の延長に近かった私小説は、SNSやブログの登場で他者を意識する必要が生まれた。今後の変化が楽しみだ。2015/09/11