内容説明
中国文学史上、木版刊行物における挿絵の印刷文化が質・量ともに頂点に達したのは明末清初である。各地の書肆は競って挿絵本を刊行し、著名画家と名刻工(彫師)の共作も生まれた。こうした書籍はわが国にも多数招来され、江戸文学・美術・工藝の多方面に大きな影響を及ぼした。当時の人々がどのように書籍に対峙したかを想起するとき、図像を無視することはできない。文学と美術の交差点である挿絵に注目し、その研究のもたらす可能性を探る。
目次
小説刊本における版本挿絵の拡がり(周日校刊『三国志演義』の挿図について;『全相平話』のビジュアルワールド―「上」からみる作品の素顔;江戸の『絵本三国志』は明の『三国志演義』呉観明本・周日校本をどう受容したか―人物描写からみるその実相;『封神演義』におけるイメージの図像化について;孫悟空の図像イメージ―小説本文と絵姿と)
戯曲本挿絵の世界(弘治本『西廂記』の挿絵について;明代戯曲刊本の挿絵について;明刊本『西廂記』―挿絵本の華麗なる発展)
版本挿絵の発展と伝播・拡散(『中国小説絵模本』に見る中国小説の挿絵;勧戒図説の図について;『三国志演義』の年画―楽しみを反芻するために;明清版本は日本においてどう和様化されたのか―日中韓の比較からみる十七世紀の諸相;“意匠”の宝庫―明清挿絵本と工藝品―清朝(琉球)漆藝、陶磁器の作例初探)