内容説明
出版社が本を作り、書店に並んだ本を読者が購入する。そんな現在の出版流通が成立する以前の書物をささえていたのはパトロンの存在だった。西洋における中世以降の書物の成り立ちを辿りながら、18世紀イギリスの出版文化における作家、パトロン、書籍から新聞、広告といった全貌に迫る快著。
目次
第1部 パトロンの時代(写本時代の本の出版;パトロンの系譜;偉大なるパトロンたち;パトロンの変化;パトロンから読者の時代へ)
第2部 一八世紀の出版流通(一八世紀の出版と法律;ある地方都市の新聞;地方における印刷業―イギリス文化史の一面;検閲法と出版;書籍産業の発展;地方の書籍市場;流通システム;市場の拡大;書籍業の仕事(その1)
書籍業の仕事(その2))
著者等紹介
清水一嘉[シミズカズヨシ]
1938年神戸市生まれ。東北大学文学部卒業、同大学文学研究科修士課程修了。専攻は英文学、英国文化史。現在、愛知大学文学部名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Susumu Kobayashi
6
18世紀頃までのイギリスの出版文化史について記述した学術書。個人的にはそれ以降の話が知りたかった。「文字通り本の虫」だったというジェイムズ・ヒッチコックに関して「教区牧師としての才能は教区民が次々と非国教徒に改宗していったことからもわかる」(p. 276)とあるのは、才能がなかったと言いたいのだろうか。本の価格に対する利益配分について、かのサミュエル・ジョンソンが言及(p. 279)しているとは!2020/05/25
Go Extreme
1
パトロンの時代 写本時代の本の出版:本の出版とパトロン フランスとイギリスの事情 写本時代の本の値段 パトロンの系譜:高位聖職者 偉大なるパトロンたち パトロンの変化:パトロンと大学 桂冠詩人 中世の作家 読者の分散・孤立化 パトロンと作者の関係 パトロンから読者の時代へ:宮廷詩人 依頼で書かれた作品 時代の趣味 18世紀の出版流通:18世紀の出版と法律 ある地方都市の新聞 地方における印刷業―イギリス文化史の一面 検閲法と出版 書籍産業の発展 地方の書籍市場 流通システム 市場の拡大 書籍業の仕事2021/03/21
志村真幸
0
中世から19世紀初頭までを対象とし、イギリスにおける出版事情をいくつかの側面から分析した研究書だ。タイトルにあるとおり、主要なテーマとなっているのはパトロンの問題で、18-19世紀に出版業界が成立して無数の「読者」に本が売れるようになるまで、作品を世に出すにはパトロンが欠かせなかった。貴族や聖職者などと作家たちとの関係をときあかし、作品の内容や質ともからめて論じている。 後半は18世紀の出版流通に関する内容だ。具体的にどのようにして本が地方へ運ばれたのかなど、地方における出版業の実態が詳述されていく。2022/03/07