内容説明
透徹した視点と感動的な筆致で被爆の実態をつぶさに描いた名作。当時、GHQにより付された「マニラの悲劇」をあわせ、その衝撃的な初版の姿がよみがえる。オバマ大統領演説、北朝鮮核問題…いまこそ読まなければならない「核の悲劇」の実相。
目次
長崎の鐘(その直前;原子爆撃;爆撃直後の情景;救護 ほか)
マニラの悲劇(スペイン人居住民の蒙りたる被害;ラ・サール学校の虐殺;日本軍によるキリスト教教会の破壊;日本軍による赤十字病院の破壊、看護婦および患者の殺戮 ほか)
著者等紹介
永井隆[ナガイタカシ]
1908年~1951年。医学博士。1934年に洗礼を受け、聖ヴィンセンシオ会に入会。1945年8月9日、爆心地から700メートルの距離にある長崎医大の診察室で被爆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よぽ
3
長崎医大の医師である著者が、1945年8月9日被爆しながらも医師として活動し感じたことを詳細に書き表した手記。もう凄まじいとしか。自分達が受けた爆撃が原子爆弾によるものだとわかった時、今後どのような症状が自身に起きていくのかも同時に分かっているはずなのに、どのように開発したのか、誰が開発したのか、しまいには「偉大な発明だねえ」と語り合う研究者達の様子が人間の強さや面白さを感じさせる。著者が敬虔なクリスチャンのため、私には感情的に理解が難しい部分もあったが、後世に伝えていきたい名著だと思う。2021/03/05
春風
3
昭和24年の初版の復刻版。原爆の悲劇を被爆した医師の立場から綴った本篇だけではGHQに出版が認められず、日本軍の蛮行を記した「マニラの悲劇」がついている。2015/05/31
マウンテンゴリラ
2
戦後生まれの我々にとって慚愧に堪えないこと。それは、ほんの一世紀よりも遥か最近に起こった太平洋戦争、その中での日本人にとっての最大の悲劇といっても良い原爆投下に対して、遥か昔のことのように忘却の彼方に忘れ去ってしまったこと、いや、忘れ去ろうとしてしまったこと。それは、戦争、原爆のことに限らず、年代を追って見ても、公害問題、バブル経済とその崩壊、阪神淡路大震災、オウムによるテロ事件、更にはほんの数年前に起こった東日本大震災等々についても同様のことが言えるような気がする。→(2)2017/03/30
かりん
2
4:「マニラの悲劇」付きが昨年出たようなので、GHQの意図を汲むべく選択。原爆に感謝、と聞くと「?」だけど、読んでみるとキリスト教徒として自然な気も。若干貧血になりつつ読む。冷静な筆致。戦争によって僕たちの運命がきめられるんじゃない。僕たちによって戦争の運命が決められるんだ。竹槍と原子爆弾。人口太陽。物質がエネルギーに忽然として変わる。生きてあればこそ、生きてあればこそ。若いものほど著しい障害。天国の落第生。アメリカと全世界とが原子爆弾を使用せざるを得なかった所以。(←全世界って…主語増やしてるし)2010/08/10
YukoNexus6
1
#読書フェス #tex 同じ赤十字病院で起こった二つの国の二つの悲劇のあまりの「距離」に圧倒される。長崎では永井隆氏という日本人の顔と声が伝わるようで、マニラでは顔のない「軍」がヒトから遠く離れて行う。そのことを私たちはあまりにも知らな過ぎたと思う。顔のある人にはどんな地獄の中でもワクワク感や笑いが止まらない心臓の鼓動のように付いて回っている(原爆の開発について理系オタクっぽく論じ合う青年医師たちの生き生きとしていること!)。どちらにせよ被害者には顔と声があり、加害者は機械化しているようだ。2016/04/25
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