内容説明
「軍神」と呼ばれ、「生涯不犯」を貫いた上杉謙信。毘沙門天を信仰し、助けを求められれば東奔西走し、敵陣にさえ直接馬を乗り入れる「義」を重んじる姿は、戦国最強の義将として定着している。だが、本来の謙信は、父・為景が朝廷や幕府権力を利用する武略を見て育ち、その政治手法を引き継いだ。謙信が目指したのは自らが上に立つことではなく「室町幕府再興」であった。今までの通説を、最新資料をもとに論考を重ね、新たな結論から導いた上杉謙信の実像がここにある。
目次
序章 長尾為景の魔法と上杉謙信
第1章 要請された守護代継承―長尾景虎の登場
第2章 大名権力と公儀精神の矛盾―長尾宗心の苦悩
第3章 前嗣・義輝・景虎の密約―戦国終焉のシナリオ
第4章 関東管領名代職に就任する上杉政虎
第5章 中央情勢と連動する川中島合戦―四五〇年目の真相
第6章 永禄の変と関東三国志―上杉輝虎の関東離れ
終章 不識庵謙信と天下の儀
著者等紹介
乃至政彦[ナイシマサヒコ]
1974年香川県高松市生まれ。戦国史研究家。専門は、長尾為景・上杉謙信・上杉景勝、陣立(中世日本の陣形と軍制)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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六点
83
「義の人」と呼ばれ、領土的野心を持たずに戦い抜いたと思われがちな上杉謙信の生涯を通覧し、公権力を利用し戦い抜いたその姿を描き出している。著者の上杉謙信愛好癖が全面に出ているような気がしなくもない。故藤木久志氏の謙信人身売買及び関東への略奪遠征説に鋭く反論している。2024/04/13
選挙ウォッチャーちだいそっくりおじさん・寺
65
上杉謙信は何故カッコいいか?。それはきっと滅びる側に殉じた楠木正成、真田幸村、土方歳三と一緒なのだ。謙信は戦国時代の佐幕派である。幕府と共に滅びなかったから見え辛いが、乱れた戦国を終わらせようと奔走する姿がここにある。時に思惑と外れ、時に裏切られ、謙信の理想が現実に足を引っ張られる。そんな実像を推理考察しながら書かれた評伝の良書。謙信スキャンダルである男色や人身売買の実際も考察。著者は謙信贔屓だろうが、実際の謙信も立派な人物であると解った。ワニ文庫は歴史雑学本ではなく、こんな良書を今後も復刊して欲しい。2017/03/04
roatsu
14
希代の戦上手、義の武将として知らぬ者のない大名である上杉謙信だが、その生涯において何を意図し、行動したのかは意外と知られていないと思う。一守護代から飛躍の下地を作り、また朝廷や室町政権という中央の権威を巧みに用いる手本を示した梟雄である父・為景から始まり、その生涯を内面にも焦点を当てて探った一冊で勉強になった。旧秩序を重んじる武将を室町大名とすることにも違和感なし。そもそも皆様ご自身達で戦国大名などと名乗っていないのだし。藤木説の口減らしのための外征説への反論も説得力に富む。食い詰めてへろへろの将兵が精強2020/11/10
スー
12
通説を覆すは誇張ではなかった。最初から驚きの連続で、寺に入ったのは反為景派に包囲された為に避難させただけで戦が勝利に終わったら元服し、為景の隠居も政治的敗北ではなく万全の体制になったから晴景に譲り、謙信と兄の争いもなく、晴景の嫡男が成人するまでの代理として謙信が後を継ぐ。晴景の子が亡くなったので景勝に長尾家を継がせ、景虎には上杉を継がせ北条と武田と同盟を結び将軍を助ける計画だった。謙信はずっと幕府再興を夢見たが信玄や氏康に邪魔されうまくいかなかった。謙信が領土を増やそうとしなかった理由が分かった気がします2017/04/30
orihuzakawagon
2
一応歴史物語好きではありますが、上杉謙信の生涯をきちんと把握しているわけではないので、大変興味深く読みすすめることができた。また、一応歴史物語好きなので、「義将」上杉謙信や「食うために汚い侵略者」上杉謙信を知ってはいるので、それとは別に「室町大名」上杉謙信という考え方は新しい視点を得ることが出来て知的好奇心が満たせたのと同時に、この本ではその視点に引っ張られすぎな気もした。が、自分で史料を読み解く力はないので、あくまで気がしただけです。2017/03/20
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