内容説明
優勢に戦いを推し進めてきた帝国陸海軍だったが、敵の戦意を挫く決め手を打てぬまま、今では圧倒的な物量を誇る連合軍に圧迫され始めている。昭和一九(一九四四)年七月七日を期して発令された作戦「回天」の名称には、窮地に立たされつつある状況を一気に転換させようとの意味が込められていた。迫りくるアメリカの大艦隊を前に、旗艦「大淀」の艦橋は騒然としている。(皇国の興廃は此の一戦にあり…か)小沢はマストに翻るZ旗を見つめ、汗ばむ手をぐっと握り締めた。同じころ、遠く離れた霞ヶ関の大東亜大臣室で、西条は珍しく大きく息をついた。(この戦いの帰趨がすべてを決めることになる。文字どおり一世一代の大勝負。小沢中将、我々の明日はあなたの、あなたたちの肩にかかっています)七月九日、午前六時四四分、空前絶後の海空戦が始まろうとしていた。
著者等紹介
林信吾[ハヤシシンゴ]
ロンドンで「欧州ジャーナル」を創刊、初代編集長。ノベルズやノンフィクションの分野で活躍
清谷信一[キヨタニシンイチ]
軍事ジャーナリスト。精力的に海外取材をこなす。国内外の軍事情報に精通している
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