出版社内容情報
強い武将の秘密は「行列」にあった! 武士の行列は、どのようにして戦闘用となったのか? 平安時代の天皇の行幸から戦国時代の陣立書、徳川時代の大名行列や参勤交代の行列まで、『戦国の陣形』の著者が武士の行列を大解剖する。
乃至政彦[ナイシマサヒコ]
著・文・その他
内容説明
「大名行列」は、一般的に儀礼の行列から発展したと考えられている。歴史家・乃至政彦氏は、この行列の編成様式に注目。史料を読み解き、その起源は上杉謙信が武田信玄に大勝した「川中島の戦い」の軍隊配置にあったと指摘する。謙信はこの戦いで、多くの一般兵士を失う代わりに、敵の上級指揮官を討ち取るという、ある意味、リスクが高い戦術をとった。本書で乃至氏は、「川中島の戦い」や「大坂の陣」など戦の謎を行列から紐解き、さらに全国に普及していった武士の行列の変遷を通して、用兵思想の実相を明らかにする!
目次
軍隊行進だった大名行列
領主別編成と兵科別編成
中世初期の兵科別編成
村上義清から生まれた戦列
京都を訪ねた兵杖行列―越後の隊列
謙信の軍列―車懸りの真相
武田軍の隊形―模範的軍隊の創出
北条軍の隊形―岩付衆諸奉行のチャレンジ
上杉三郎景虎の軍師
織田信長と明智光秀の戦争
武田家遺臣と蒲生氏郷の陣立書
豊臣時代の陣立―伊達政宗と上杉景勝の陣立
大名行列と車懸り
著者等紹介
乃至政彦[ナイシマサヒコ]
歴史家。1974年、香川県高松市生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
岡本
117
中世から戦国・江戸時代の行列に焦点を当てた一冊。大合戦や有名な合戦では描かれる事もある隊列や陣形がどの様に発展して江戸時代の大名行列に繋がっていったのかが細かく書かれている。「領主別編成」と「兵科別編成」、各大名が考案した陣形など目新しい内容が多い良書。2018/12/02
yamatoshiuruhashi
33
表題からして参勤交代の「大名行列」だけを連想し読み始めたが少し違う。参勤交代制を論じたものではなく、その「大名行列」の形の成り立ちを軍事的歴史的に考察した一書。「大名行列」とは「行軍」であり、散漫な戦場地域への移動から、移動そのものが戦闘の一部と考えられるようになる過程や、戦術の変化と「武士」の在り方の変化を併せ考えられている。切り口がある意味斬新であるが、この考え方の延長に近代的軍隊以降の歩兵戦術に流れていくのは必然であり、源平合戦からワーテルロー、第一次大戦の膠着する欧州戦線まで通じる好主題だった。2018/11/30
maito/まいと
20
乃至さんの本にハズレなし‼️今回も戦国大名の陣(備)の系譜について、超マニアック、かつわかりやすい解説。信玄を苦しめた謙信の強さの秘密が陣形で、始祖が村上義清とは・・・目から鱗!日本の技術研究と発展過程や変転についても非常に興味深くおもしろかったなあ。肝心の大名行列については後日談化していて、タイトルとのミスマッチを感じたが、中世➡️近世を見直すいい機会になった。それにしても乃至さんの信長評は容赦ない(笑)愕然とする織田軍団の実態と、明らかになる明智光秀の功績。来年の大河の見方が変わりそう。2019/03/09
サケ太
19
新たな視点を得ることが出来る一冊。大名“行列”とは戦国時代の陣形を継承した実戦的なものであった。古代に編み出され、後に領主別編成が主となっていく中で喪失し、村上義清の奮闘から生まれた兵科別編成。それを継承した上杉謙信の『車懸り』。戦国の世の中で生き残る生まれた陣形。それは各国の戦国大名も参考にし、大坂夏の陣を境に江戸の世でも継承される事となる。参勤交代の本当の目的。江戸時代における軍事行動の必要性。織田信長の軍制についても言及されているのも面白い。本当に明智光秀という人物は優秀だったんだと再認識。2018/10/08
六点
9
村上義清の上田原の戦いでの小銃手と弓兵による、驚異的な戦闘が敵である武田氏に、更には村上義清の亡命先の上杉氏やそれと戦った北条氏に兵科別編成が受け継がれ、やがて東国から全国へ少しずつ改良されつつ、最終的に大名行列の編成に行き着いた。特に村上義清については歴史啓蒙書にあり得べからざる熱量を持った記述が読者を惹きつける。伊達政宗の重厚な鉄砲重視編成が与力衆を壊滅させ、決戦時には弾切れという結果を招いたと言うのは苦笑する他なし。資料館に良く展示してある大名行列図を見る目は確実に変わる。好著である。お薦めする。2019/08/13