出版社内容情報
教育のデジタル化を目指すGIGAスクール構想だが、理想ばかりを描く政府と、混乱する実際の学校は大きく乖離している。現場を置き去りにする教育改革の是非を問う。
内容説明
学校でのICT機器活用を目指すGIGAスクール構想により、今、生徒には一人一台のデジタル端末が配付され、「制限のない自由な使用」が認められている。しかし、活用の実態は政府が夢想する風景からは程遠い。規制をくぐり抜け、タブレットを「使いこなす」子どもと、膨大な業務に追われつつ、その対策に苦慮する教員―。理想を描くばかりのGIGAスクール構想がクラスを崩壊へ導く。
目次
序章
第1章 ネット空間を生きる子どもたち(切っても切り離せないネットと子どもたち;依存性の強い無料ゲームの数々;栄枯盛衰のゲーム事情 ほか)
第2章 学校と子どもの今(GIGAスクール構想のはじまり;最初から結論が決まっていた議論;所与性が崩壊していく学校 ほか)
第3章 川下から見えてくる教育改革(中学生に馬鹿にされるアンケート;信じがたい議論の数々;川上の強い意志により歪む議論 ほか)
著者等紹介
物江潤[モノエジュン]
1985年、福島県生まれ。早稲田大学理工学部社会環境工学科卒。東北電力、松下政経塾を経て、現在は福島市で塾を経営する傍ら社会批評を中心に執筆活動に取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みねね
32
本当にありがたいことに、今現在は一人一台タブレットを利活用できる環境に置かれている。しかしそんな中でも、ICT教育は、生徒のリテラシーも教員の技量も川上の要請に全く追いついていないと感じる。これまで150年培われてきたチョーク&トークの教授術に比べると、だいたいの実践はままごとレベルに近く思えてしまう。ただ数学で役に立つのは媒介変数表示の厄介なグラフが簡単に書けることかな。有理数比でないリサージュ曲線などは面白い。生徒にもグラフを書かせているが、これが別の学校で通用するかと言われると何も返せない。2024/02/02
Akki
7
やれやれ……と思いながら読み終えた。本書で言うところの川下側の人間として、同意することの多い内容だった。文房具のようにICTを使えるように、というお題目自体は分かる。ただ、文房具はツールでしかないので、「何がなんでも常時使わねば」という物ではないはずだ。なのに現場では、教育委員会からICT使用ありきの授業展開を求められ、ICTを使うことが授業改善計画の目標に掲げられている。使う文房具を強力に指定される状況は、普通に考えたら変なことだが、現状はこんなことがまかり通る。拙速に物事を進める愚を川上は知るべきだ。2024/03/03
oooともろー
6
ほぼ全面的に同意。現場軽視の政策は失敗する。2024/01/15
totuboy
5
確かにデジタル教育の理想と現実とのギャップはすさまじい。デジタルはあくまでも手段であって目的ではないはずなんだが、使うということ自体が目的となっている感がある。筆者の主張はよくわかるのだが、とかく負の部分ばかりを取り上げている気もする。デジタル化がうまくいっている一般的な事例もあるはずなのだが。また本書は、デジタル教育というより、現在の学校の問題を一般的に述べている気もする。土台がしっかりとしていないので、そのうえでデジタル化を進めてもだめだという論理展開。2023/12/25
コンクリ君
3
なかなか面白かったです。デジタル教科書の利便性とは何か?紙製より軽くて良いってこと?資料集としてだったり、音声データ利用には非常に役立ちそうですが。教育って効果が見えにくいから難しい…。重要なのは、間違ってる、と認められる勇気と、改善できる見識があることでしょうか?2024/06/23