出版社内容情報
距離的にも歴史的にも日本とつながりが深い上海は記者を悩ませる「魔都」。強まる監視体制、世界を揺るがせる新型コロナ、デジタル技術の最前線……。巨大都市で何が起きているか。
内容説明
中国人をも悩ますネット規制、突然途切れるスマホの通話、取材への圧力…。どこにいても誰かに見られている―。日本と異なる環境下で、現地特派員はいかに取材し、どのような日常を送っているのか。そして、変わり続ける大都市の姿とは。拝金と急速なデジタル化にさらされる、上海の現在とこれからを描く。
目次
序章 上海特派員の日常と舞台裏
第1章 デジタル都市の光と影
第2章 「草の根交流」の最前線
第3章 「九州の西」上海から日本を見る
第4章 中国社会はどこへ向かうのか
第5章 新型コロナに揺れる中国
第6章 上海総領事に聞く
著者等紹介
工藤哲[クドウアキラ]
1976年青森県生まれ。埼玉県出身。99年に毎日新聞社入社。盛岡支局、東京社会部、外信部、中国総局記者(北京、2011~16年)、特別報道グループ、上海支局長(18~20年)を経て秋田支局次長。共著『離婚後300日問題 無戸籍児を救え!』(明石書店)で07年疋田桂一郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さとうしん
8
上海を中心とした、ここ3~4年の中国事情。ただ上海のロックダウンで、内容にはや一昔前感が出てしまっている。扱う内容は多岐に渡るが、中国のカレーの普及と近年の野球事情が面白い。また中国の対口支援は日本も見習えるだろう。2022/05/04
鷹ぼん
5
サクッと上海の当世事情を知りたい人にはうってつけの本。上海を知る人には「そうやよね」って同意できるけど、物足りないかも。97年、初めて上海に行った。目抜き通りの南京東路はトロリーバスや車がひしめき、熱気がムンムン。若者はというとランニングにスラックス、すっぴんに地味なワンピース。99年、様相は一変していた。そのスピードは21世紀になってさらに加速していた。当時住んでいた香港では味わえない感覚に魅了された。本書を読むに、もはや付いて行けんなって思う。コロナで都市封鎖が続く上海。それからの上海を見に行きたい。2022/05/01
うえ
4
一昔前とは全く容貌を変えた上海。画像つき信号機により、赤信号歩行者は顔認証で確実に罰していく。あらゆる手続きに必要な微信IDとスマホ番号、凄まじい速さで増える無人理髪店、無人書店、無人図書館、ロボアームカフェ、静脈認証自販機などなど。そしてAIを駆使し最小限の人員で都市運営を狙う政府関係者たち。常に日本より三、四年先を行きつつも、極限のディストピアを想像してしまう。「筆者は、どうしても人に知られたくない外出時はスマホを自宅に置いていくこともしていたが、「もう逃げられない」という感覚は年々強まる一方だった」2023/04/01
takao
3
ふむ2024/06/14
Yuhei Kudoh
2
「引っ越せない隣国」の経済都市、上海に特派員・支局長として長く駐在した毎日新聞記者が、豊富な取材経験から得られた独自の視点で語ったルポ。どちらかと言うと政治的な視点で語られる中国を、人々の生活の視点(デジタル都市・対日等)から切り取った記述は臨場感たっぷりで、読ませるものがあった。上海の人々が、日本の田舎に「癒し」を求めたという事実には驚いたが、その田舎を知るために著者ご自身もまた、日本帰国後希望して秋田支局に赴任したという徹底ぶりには驚かされた。2023/01/03