出版社内容情報
罪を犯した少年たちは、いかにして心が壊れたのか。矯正教育ではどんな取り組みが行われているか。虐待を受けた少年たちの病理と矯正教育の最前線を追った著者渾身のルポ。
内容説明
統計でも裏付けられる、虐待と少年犯罪の因果関係。虐待を受けた少年はなぜ、自らが犯した罪と向き合おうとしないのか。なぜ自分の命さえ大切にできないのか。彼らの心の中でいったい何が起きているのか。はたして社会に彼らの生きる場所はあるのか。被虐待、性非行、ドラッグ依存、発達障害との関係…。少年犯罪の病理と矯正教育の最前線を追う。
目次
第1章 少年院の矯正教育
第2章 少年の“心の闇”とは何か
第3章 性非行に走る少年たち
第4章 ドラッグという底なし沼
第5章 被害者遺族の慟哭
第6章 非行少年は生まれ変われるのか
著者等紹介
石井光太[イシイコウタ]
1977年東京生まれ。作家。国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材・執筆活動をおこなう。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
103
石井さんのルポはいつも重たくつらい。殺人、暴行、薬物中毒。少年少女達はなぜ犯罪を犯したのか?これまで、不幸な家庭環境が原因だという弁護を聞くたびに、いくら不幸な家庭とはいえ善悪の判断くらいはできるだろうと思っていたが、彼等のインタビューを読むうちに、必ずしもそうとは思えなくなった。物心つく前から暴行、ネグレクトを受け続けた彼らには「悪いこと」を学ぶ機会さえなかったのだ。絶望的な中で、最終章でまさに人生の全てを注ぎ込んで更生保護施設を営んでいる人々がいる事を知り感銘を受けた。五つ星です。★★★★★2019/08/29
おくちゃん🌹柳緑花紅
98
生まれてくる家庭を選ぶことが出来ない不条理。他人の痛みを考えることが出来ない。自分の命さえ大切にすることが出来ない。人を傷つけて平然としていられる。その原因の多くは家庭にある。親の虐待により心の発達が阻害された結果が非行、事件へと繋がる。木に例えるなら子は葉。根が腐っていたら…更生への道のり。再犯。そして被害者遺族の苦しみ。悲しみ。国が、社会が、個人がそれぞれの立場で立ち向かうべき道とは。それでもそこに動き出した人達がいることに救いがある。多くのかたに読んでほしい気持ちで読了。 2020/06/27
rico
77
非行少年・少女達。暴力、ネグレクト、レイプ、覚醒剤・・・例外はあるにせよ、その生育歴は凄まじい。少年院等で矯正教育を受けても、社会に居場所がなければ元の世界に戻るしかない。そして彼らも子どもを持つ。果てしない反社会性の連鎖。その中で、田川ふれ愛塾の取組みは素晴らしい。信頼と帰る場所があることを実感すれば、光のある方に歩いていける。本来これは善意の個人頼みでなく「公」が担うべき役割。でも残念ながら、生産性至上主義が跋扈する社会では理解を得るの難しい。こういう著作がそれなりに売れるのは救いかもしれないけど。2019/09/26
こばまり
71
虐待と少年犯罪の因果関係にも、矯正教育のシステムエラーにも暗澹たる気持ちになる。一筋の光明を見るが、やはりそこには人生を捧げたカリスマの存在がある。それにしても著者の多作に驚く。もはやユニット名なのではと思ってしまう。2019/08/03
skunk_c
62
幼少時から孤立し、虐げられ、痛めつけられたこどもの精神が何を引き起こし、それがどんな結果をもたらし、それを再生産しないためにはどうしたら良いのか。この難しい問いに正面から向き合った書だ。関係者のインタビューから浮かび上がるのは、この問がとてつもない難問であり、容易に答えが出ないということ。少年院などの職員や関係者は一所懸命努力しているが、最終的に必要になるのは、ひとりひとりのこどもとの信頼関係を如何に作るかということか。罪を犯した者を社会が受け入れる難しさは、その関係性にまで意識が及ばないことか。重い。2020/04/20