平凡社新書
カール・ポランニーの経済学入門―ポスト新自由主義時代の思想

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  • サイズ 新書判/ページ数 314p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784582857849
  • NDC分類 331.234
  • Cコード C0233

出版社内容情報

一元的な市場原理主義批判を超えた「人間のための経済」への想像力から、自由とは何か、良き社会とは何かを根源から問い直す意欲作。

はじめに──よみがえるポランニー


第一章 カール・ポランニーの生涯と思想
破局の時代を生きたポランニー/ハンガリー時代(一八八六─一九一九)
ウィーン時代(一九一九─一九三三)/イギリス時代(一九三三─一九四七)
北アメリカ時代(一九四七─一九六四)/新たな研究テーマ──産業社会は自由でありうるか

第二章 市場社会の起源
──産業革命と自己調整的市場経済というユートピアの誕生

1 居住か、進歩か──産業革命がもたらした社会的混乱と文化的破壊
産業革命と市場経済システム/産業革命と囲い込み運動の比較
市場経済の導入と文化的破壊/経済的自由主義に利用される産業革命史

2 救貧法論争と経済的自由主義──貧困と失業がなくならないのはなぜか
飢えによる労働市場の自己調整──マルサスの救貧法批判の論理
救貧政策は意図に反して貧困を増やす、という逆転的命題の説得力
市場経済に取り込まれた自然、宗教と経済的利害との分離

3 なぜ飢える隣人を助けるべきではないのか
救貧法とキリスト教的共同体/キリスト教による市場システムの肯定

4 市場社会における経済的自由主義への対抗論理
オウエンによる「社会の発見」/オウエン的社会主義と社会改革


第三章 市場ユートピアという幻想
──経済的自由主義の欲望と社会の自己防衛

1 市場ユートピアという欲望
市場経済、市場社会、自己調整的市場/商品擬制と市場経済の制度的本質
経済的自由主義の実現不可能な欲望

2 なぜ市場の拡大は社会的保護を伴うのか
商品擬制と二重運動/社会の自己防衛と共同社会の全体的利害
社会的・文化的破局と社会保護

3 二重運動──経済的自由主義 対 ポランニー
二重運動の解釈をめぐる対立/経済的自由主義の自己矛盾


第四章 劣化する新自由主義
──繰り返される市場社会の危機、無力化される民主主義

1 市場社会の危機、民主主義の破壊、ファシズム
金本位制とその破壊的影響から生まれた保護主義──二重運動の新たな局面
国民的通貨、経済的帝国主義、第一次世界大戦
再建金本位制のもとでの二つの介入主義の対立──市場ユートピア的試みの失敗
世界経済・市場文明の崩壊とファシズム、ニューディール、社会主義
平和は市場システムの従属変数であった──経済的自由主義とファシズム
市場社会の危機のなかで民主主義と自由の諸力がいかにして奪われたか

2 市場社会を支える哲学は、危機についてどう解釈したのか
リップマンの『良き社会』と新自由主義の誕生/「赤いウィーン」をめぐる対立する解釈
経済的自由主義のユートピア的試みの致命的な失敗が危機をもたらした

3 劣化する新自由主義と無力化される民主主義
一九世紀的市場経済の危機と新自由主義の理念──モンペルラン会議
新自由主義における多様性の喪失──市場原理主義への収斂
東西冷戦終結後の新自由主義的経済社会改革から現代の危機へ


第五章 市場社会を超えて、人間の経済へ

1 晩年のポランニーの挑戦──ポスト『大転換』の枠組みを求めて
市場社会からの転換──普遍的資本主義 vs. 多様な民主主義の可能性
第二次世界大戦後の新たな市場社会分析

2 経済社会学の問い
経済(的)の二つの意味/市場社会の経済社会学的分析/経済主義的文化に対抗する

3 アリストテレスの経済倫理
良き生活と中庸/等価と正義/「自然的」な政治秩序と経済の制度化

4 社会における経済の位置を問う──互酬・再分配・交換
互酬・再分配・交換という三つの統合形態/貨幣の制度主義的分析

5 古代ギリシャの三つの命題──ヘシオドスとアリストテレスの対照から
ヘシオドスの経済思想──鉄の時代におけるマルサス主義の誕生
アリストテレスの制度の経済思想

6 民主主義によって市場経済を超える──ポランニーの倫理的社会民主主義


終章 人間の自由を求めて──ポスト新自由主義のヴィジョン

1 複雑な社会における人間の自由とは
「自由のための計画」をめぐって/イギリス版『大転換』以降の自由論の三つの要点

2 社会的自由

3 社会の現実と制度改革──世論と政治領域を取り戻す

4 良き社会をめざして
三つの基準線/悪しき社会と良き社会


あとがき

参考文献
索引

【著者紹介】
1973年生まれ。大阪市立大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。現在、大阪市立大学大学院准教授。専門は経済思想史・社会思想。著書に、『カール・ポランニー──市場社会・民主主義・人間の自由』(NTT出版)、論文に、「贈与──私たちはなぜ贈り合うのか」(橋本努編『現代の経済思想』所収、勁草書房)、「カール・ポランニーと社会政策の思想的次元」(社会政策学会編『社会政策』第6巻第3号所収、ミネルヴァ書房)、共編訳書に、K. ポランニー『市場社会と人間の自由』(大月書店)など。第10回経済学史学会研究奨励賞受賞(2013年度)。

内容説明

経済的自由主義の欲望の果てに待つディストピアを超えて、二〇世紀の名著『大転換』にこれからを生き抜くためのヒントを探る。今こそ知りたい、ポランニーのすべてが詰まった一冊!

目次

第1章 カール・ポランニーの生涯と思想
第2章 市場社会の起源―産業革命と自己調整的市場経済というユートピアの誕生
第3章 市場ユートピアという幻想―経済的自由主義の欲望と社会の自己防衛
第4章 劣化する新自由主義―繰り返される市場社会の危機、無力化される民主主義
第5章 市場社会を超えて、人間の経済へ
終章 人間の自由を求めて―ポスト新自由主義のヴィジョン

著者等紹介

若森みどり[ワカモリミドリ]
1973年生まれ。大阪市立大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。現在、大阪市立大学大学院准教授。専門は経済思想史・社会思想。第10回経済学史学会研究奨励賞受賞(2013年度)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

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壱萬参仟縁

34
ポランニーは世界経済停滞と危機のなか、生活破壊や犠牲を強いても市場システムの競争秩序を強力にして危機打開を図る経済的自由主義に対峙(12頁~)。経済学は、社会科学に中枢的位置で方法、定義の在り方が社会科学全体に影響を与えている(19頁)。人間と市場の関係を問い直す作業は、彼のライフワークの核心(21頁)。自由主義的社会主義:社会主義を道徳的責任と行為の自由によって定義。マルクスの唯物的経済決定論を拒絶。赤いウィーン:1918-34年のウィーン市政は労働者の共同生活の都市的形態の実験室だった(28頁)。2016/01/20

ゆう。

30
民主主義を否定しながら市場原理万能論としての新自由主義社会である現代資本主義。それに対して人間のための経済学を構築することをめざしたカール・ポランニーの経済学の構築の筋道を丁寧にたどった内容だと思います。ポランニーは経済還元主義的な教条的マルクス主義に対しても否定的な見方を示し、人びとの民主主義を求める運動なども重視します。本来的なマルクス主義は経済還元主義とは違いますが、ポランニーが大切にしようとした人間の自由は学べきものがあると思います。ポランニーの本を読みたくなりました。2018/08/24

呼戯人

16
三読目。カール・ポランニーの偉大さをかみしめながら、ゆっくりと読んだ。全てを経済現象、階級闘争に還元してしまうマルクス主義の欠陥にも目が行き届き、市場社会の非人間性を暴いてゆくポランニーはまさに天才の名にふさわしい。「大転換」や「人間の経済」も翻訳があるので読んでみようと思っている。社会民主主義の経済的基盤をどのように作るかという先見の明のある論点をすでに70年以上も前に見通していたポランニーは絶望の時代に灯る微かな希望の光である。2018/02/04

呼戯人

15
もう一度この新書を読み直してみた。名著と言っていい。いや、カール・ポランニーの思考の偉大さがこの小著を通してよくわかる。すでに50年前に亡くなっている経済社会学者なのに、まるで現代のネオリベラリズムの酷さを予言していたかのように読めるのである。著者の若森みどりによれば、ポランニーは社会と経済の対立点をはっきりさせ、新古典派もマルクス主義も陥っていた経済至上主義を越えているというのである。超格差社会、経済が民主主義も福祉も教育も医療も破壊してゆくこの現状を乗り越えてゆく処方箋をポランニーは提示していた。2016/03/07

吟遊

12
『大転換』の著者、カール・ポランニーの思想紹介。ヒューマニズムに基づく経済学により、経済的自由主義(いまのネオリベにつながる)を徹底的に批判的に史的に検討する。やや難解で重複のある書き方とは思うが、良書かな。2017/11/09

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