出版社内容情報
飢餓に倒れる人々を支援することは私たちの義務なのか?「義務」と答える諸思想を読み解く。多様な立論を吟味してその立場へと誘う。
【著者紹介】
中央学院大学准教授
内容説明
世界では、貧困が原因となって失われていく命があまた存在する。先進国の豊かさを享受している者たちにはこの事態についての責任があるのではないか。この問いに、「ある」と答える代表的な思考、シンガー、オニール、ポッゲ、シュー、セン、ヌスバウム…“飢えに抗う義務”を主張するその理路を明解に紹介・吟味して、現代の倫理のあり方を提示する。
目次
序論 世界的貧困と倫理学
第1章 援助の救命モデル―シンガーの功利主義的援助論
第2章 援助のカント主義―オニールと「カント的に正しい世界」
第3章 加害としての貧困―ポッゲの消極的義務論
第4章 地球規模の格差原則―ロールズとその批判者たち
第5章 生存権のための援助―シューと基本権の論理
第6章 自由のための援助―ケイパビリティ・アプローチ
第7章 倫理と政治のために―ポストモダニズムからの批判
著者等紹介
馬渕浩二[マブチコウジ]
1967年岩手県生まれ。東北大学大学院博士課程修了。中央学院大学准教授(倫理学/社会哲学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mittsko
10
大変意義ぶかい、すばらしい良書! 強くオススメ! 世界的貧困の放置は罪悪ではないのか… その解決は義務ではないのか… この善悪の問いを宗教や伝統からではなく理知的に、すなわち倫理学的に考え抜く、そんな思想家たちを次々に紹介する。シンガー、オニール、ポッゲ、ベイツ、シュー、セン、ヌスバウム、エドキンス、等など… その見識と手際がすばらしい! 著者自身の結論は「おわりに」に要約される。文体と概念、論理構成は難しめ、学術書のものだ。しかしそれは誠実さの証! 新書でありますから、広い読者層に届いてほしい一冊です2019/02/14
柳田
9
Amazonでみたら、2年前の6月に購入していた。「哲学」「教育」に興味をもつとともに、国際協力とか南北問題にも関心を持っていて多分買ったのだと思うが、シンガーとかセンとかヌスバウムとか全然読めていない。こういう応用倫理学は、哲学倫理学の中でも1番有用性があるとみなされがちな分野だと思うが、だからかヌスバウムも人文学の擁護本を書いているし、牧野先生の『持続可能性の哲学』もそういうところがひとつの主題になっている。本書は、タイトルのとおり、貧困に関する主要な哲学的・倫理学的議論を紹介するものになっている。2018/03/08
rico
9
貧しい人をどこまで助ける?国内は?などといった、貧困と格差に伴うモヤモヤ感に何かヒントが欲しくて読んでみたが、倫理学の素人には歯ごたえがありすぎで、半分も理解できなかったかも。とはいえ、貧困に苦しむ人を助けることの正当性について、懸命に論証しようとしている人たちの存在は新鮮な驚きだし、様々な国際的な支援活動を支えているのも理解できる。しかし、こういった繊細な論理は、強欲なグローバリズムに押しつぶされてしまうのではないか。筆者はどんな答えを用意しているのだろう。2017/10/04
きなこ
6
「先進国と呼ばれる豊かな国に暮らしながら世界の貧困問題を放置することは倫理的に許されるのか。」功利主義、カント主義、消極的義務論、権利理論、ケイパビリティアプローチという観点で、この問題を考察。功利主義やカントはわかりやすかったが、後半につれて理論が難しくなり、ついていけなくなった。けれど、著者の厳しい問題意識が伝わって来て、私たちはこの問題にきちんと向き合う必要がある、と思わされる一冊だった。2018/03/30
Yoshinori Osaka
4
倫理学って、こういう風に考えるんだって教えられました。2017/07/05