出版社内容情報
安倍政権は福島原発事故にもかかわらず、トルコ等に原発を売り込んでいる。その理由と問題点をわかりやすく解き明かした初めての本
内容説明
福島原発事故の収束は見えず、原因解明も不十分、世論調査でも輸出反対が六割近くを占めている。しかし、安倍政権は積極的にセールスを進めている。その背景には、国内の原発新設が困難な中、新興国への輸出で生き残ろうとする原子力産業の思惑がある。そして、米国の原子力「管理」政策がその背景にある。日本の原発輸出はどんな意味を持っているのか?国際的な視点に基づき具体的に解き明かす。
目次
第1章 福島原発事故と原子力輸出
第2章 原子力輸出の歴史
第3章 本格的な原子力輸出への始動
第4章 公的融資と地球温暖化問題
第5章 原子力輸出の実際―四つの事例
第6章 核エネルギー利用からの脱却を
著者等紹介
鈴木真奈美[スズキマナミ]
フリーランス・ジャーナリスト、英語・中国語の翻訳者。原水爆禁止日本国民会議国際部、国際環境NGOグリーンピースの核問題リサーチャーなどを担当してきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
リキヨシオ
27
福島原発事故により「安全神話」は崩壊した。原発を再稼働するか廃炉にするのか国内では議論が尽きない…それなのに政府側は「福島原発の事故の教訓を生かし、世界最高水準の原子力技術の提供」として原発の海外輸出を進めている。それは事故が起こるリスクよりも「原子力産業」と「原子力発電」を維持させる事を重視している。ウラン産業、原子力関連メーカー、原子力発電事業者、そして原子力を売りたい「輸出国」と原子力を買いたい「輸入国」など原発を利用しようとする人にはそれぞれ理由と思惑がある。国に蔓延る原子力産業の根深さを感じた。2016/03/29
壱萬参仟縁
17
原子力推進は1973年オイルショックのときがきっかけ(66頁)。国策としての原子力輸出は2005年以降(74頁~)。税金で進められる原子力輸出(94頁~)。JICAは原発輸出にODAは利用できないので、経産省の原子力立国計画の方針により、09年、研修という名目で支援事業を立ち上げた(134頁~)。開発援助を美化してはならない。健康破壊につながることが援助とは言えない。安全神話と平和利用信仰を問い直す(218頁~)。 2014/10/10
おさむ
15
福島第1原発の事故後も輸出に突き進む日本の官民複合体の理由がよくわかりました。1970年代から作ってきた原発が寿命を迎え、技術力維持の為には新興国に売るしかないんですね。温暖化対策の観点から見れば二国間CDMの推進。国家バランスをみれば、米国の衰退。勉強になりました。2014/09/04
ほじゅどー
10
★★★「福島原発事故の教訓を活かし、世界最高水準の原子力技術を提供します!」これが日本政府のセールストーク。史上最悪レベルの事故さえも原発輸出推進に利用し、2014年、トルコ、アラブ首長国連邦との原子力協定が国会承認された。背景には国内での原発新設が困難な中、新興国への輸出で生き残ろうとする原子力産業の思惑がある。そして、米国の原子力政策も絡んでいる。2016/04/27
coolflat
6
日本は80年代から原発輸出を目指してきたが、原発一式を輸出した実績はない。なぜなら日米原子力協定とライセンス契約という二つの制約があったからだ。協定により、米国起源の製品を輸出するには、米国議会・政府の承認が必要で、更に輸出先の国と米国の間で原子力協定が成立しなければならなかったこと。ライセンス契約により、特許使用料を支払わなければならなかったことだ。だがブッシュ政権による原子力回帰策で状況は変わる。これはオバマ政権にも引き継がれており、米国と日本がタッグを組み、今、正に世界中へ原発輸出しようとしている。2014/10/23