出版社内容情報
コーランの新解釈から、ジェンダー、人種問題、宗教間対話など、世界共通の問題に立ち向かうムスリムのリーダーたち。国境を越えて人々をグローバルに?げる彼らの活動に迫る。
内容説明
パレスチナ・イスラエル紛争から9・11まで、連綿と続く暴力の歴史がもたらしたのは「狂信的なテロリスト集団」など、理解を拒む宗教としてのイメージであった。しかしいま、コーランの新解釈から世界規模で新たな対話を求める動きが活発化しつつある。これまでの宗教観を刷新し、同時代を生きるイスラームを知るための入門書。
目次
序章 グローバリゼーションのなかのイスラーム
1 イスラームとコーラン(クルアーン)
2 アメリカ人「フェミニスト」の模索―アミナ・ワドゥード
3 アパルトヘイト解決への道―ファリド・イサク
4 イスラーム主義への回帰―ビラール・フィリップス
5 西洋社会との協調―フェトフッラー・ギュレン
著者等紹介
大川玲子[オオカワレイコ]
1971年、大阪生まれ。文学博士。東京大学文学部イスラーム学科、同大学大学院を経て、カイロ留学、ロンドン大学大学院東洋アフリカ研究学院(SOAS)修士課程修了の後、東京大学より博士号取得。現在、明治学院大学国際学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
19
フェミニズム的な書物としてコーランを読む、と言ったら、イスラムに不慣れな読者どころかある程度事情を知る読者でも驚愕するだろう。近代化とグローバリゼーションの大波は、イスラム教に限らず伝統宗教や社会に対して試練を与えている。過去の聖典や伝統が、近代化から生まれる生の多様化や様々な社会の矛盾に上手く答えることは難しく、時に対立することもある。本書では、そうした時代の困難に応えるため、伝統的なコーランの解釈ルールから離れ、現代の問題に向き合うためにコーランを読む思想家たちが紹介されている2015/03/13
Koning
16
タイトルがキャッチーな所を狙いすぎてていかがなものか?という感じなのだが、現代のグローバル化されつつある中でイスラームの神学の新たな発展というか極めて現代的、非アラブ的な3人の神学を紹介する本。現代日本人から見てとっつき易そうなものもあればあえて保守回帰的なものもあるというのは至極当然な感じでは有るんだけど、所謂テロリストやなんかの言うアレをイスラームと見ていた人にはそんなのじゃないものもこんなに影響力を持ってるんだよということを知るだけでも大きいと思う。井筒論文がこんな影響力持ってたとは知らなかった 2013/07/03
中年サラリーマン
10
イスラーム化というのは、資本主義の先頭にたつ先進国の中のマイノリティが光の見えない現状に対する希望としてのイスラムなのかなという気がする。資本主義はプロテスタントの本質を尖鋭化したものやし。ただ、伝統的なムスリムではないことでイスラムにこれまでにない風邪を吹き込んでいることはよくわかる。後は、個人的解釈が受け入れられていくかといったところか。2013/10/13
tenso_h(堀川てんそ)
5
イスラム国家にではなく、マイノリティーとして生きるムスリムがクルアーンをどう解釈していくのか。あげられた4名のなかではワドゥードに大変興味をひかれる。大雑把に言ってしまうと、イスラーム神学の本であるので、知らずに買うと苦痛かもしれないです。百年後の世界を見てみたい。宗教はやはり便法・過渡的思想であったと、あっけらかんと語られていたりするのだろうか。2015/04/12
gollum
4
「イスラーム化する世界」というより「グローバル化するイスラーム」もしくは「グローバル時代のクルアーン解釈」とすべきだろう。表紙のタイトルとその下の帯の惹句〝共生は可能か”が、合わせて、〝世界制覇・イスラム化を狙う、(怖い)ムスリムと(われわれ非ムスリムと)の共生は可能か”とセンセーショナルな煽りに読める。内容は、ジェンダー、アパルトヘイト、他宗教との対話などの現代的問題にムスリムがどう取り組んでいるかを紹介した真面目なものだった。論議が少し浅いまま論じている点もあるが、そこは新書にありがちなことで。2013/11/17