内容説明
差別は人種主義を基軸として時代ごとに形を変え、現代まで根強く存続するに至る。部落問題から戦後日本の民主主義を問い直す。
目次
第1章 近代国家の成立と再編される身分(賎民身分の廃止;「開化」と「旧習」のはざま;「異種」という眼差し;「家」/地方制度の成立と排除される被差別部落;“同じ”になることの希求―部落改善運動の生起)
第2章 帝国のなかの部落問題(部落問題の「発見」―部落改善政策の開始;浸透する人種主義;大日本帝国の一体化を求めて―「融和」の浮上;「暴民」像の形成―米騒動と部落問題)
第3章 解放か融和か(自力解放を求めて;「エタ」としての誇り―全国水平社の創立;被差別部落の女性と婦人水平社;「融和」をめぐる対立―中央融和事業協会)
第4章 「国民一体」と人種主義の相克(「国民一体」をめぐるせめぎ合い;新体制への期待と現実;「人種」から「民族」へ;資源調整事業への動員)
第5章 戦後から“いま”へ(部落解放運動の船出;戦後改革・復興と被差別部落;高度経済成長と広がる格差;部落解放運動の高揚;部落問題の“いま”)
著者等紹介
黒川みどり[クロカワミドリ]
早稲田大学第一文学部日本史学専攻卒業。博士(文学)。現在、静岡大学教育学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネムル
14
主に明治の解放令から、昭和の敗戦までを扱う(戦後は一章で駆け足)。差別を生み出す社会的要因や教育問題に言及されず、ガッツだぜ!のままに進む部落史に闇をみる(と同時に、似たようなトピックの連続にイライラする。本書が悪いというのではないが)。差別を逃れて北海道や満州に赴くも、アイヌやアジア民族に差別をしてしまう(ヘイトの構造)、戦時国民一致のもとに差別が人種から民族の問題に移項するも、結果戦争に加担してしまう、などが興味深い。差別の根から目を背けることが、また別の問題を誘発する。2019/04/27
ファルコファン
1
数十年前学生の時に井上清の「部落の歴史と解放理論」を読んで部落差別の勉強をした。 黒川みどりさんの本を読んで、自分の認識がすっかり時代遅れになっていることが分かりました。 例えば1951年オールロマンス事件の評価など。事件が在日コリアンに対する差別とは知りませんでした。紹介されていた1980年台以降の部落解放運動の進展など調べてみたいと思いました。狭山差別事件の評価は妥当だと思います。2022/01/29
Thinking Dragon
1
明治から現代までの被差別部落に纏わる運動史。本来こういった本では差別そのものの是非に大幅に紙幅をとることが多いが、この本はそういったことが無くすんなりと読めた。 現代の被差別部落者に対する差別の項で自分自身がこの問題に興味を持ち始めた『現代思想』が取り上げられており、まだこの問題が終結しておらず21世紀も10年が過ぎた今でも現在進行形の問題であることに慄然とする。2011/05/04
T.Y.
0
タイトル通り近代、つまり明治維新から現在までの「部落」を取り巻く動きを、比較的淡々と歴史的に叙述する。たんに権力によって作られた制度でもなく、封建時代の旧弊でもない、民衆感情と結び付いた部落差別の問題。「人種主義」に関しても日本独特の展開もあり、そう簡単には払拭されないもののようで。2013/06/01
キムチ
0
営々と生きてきた歴史の重さと「社会」の持つ残酷さと表面の差異に愕然2012/07/21