内容説明
明治四一年一一月、遠野の伝承を集めていた青年佐々木喜善が若き民俗学者柳田国男のもとを訪れた。この出会いから生まれた名作『遠野物語』刊行から百年、山の女神、ザシキワラシ、河童、天狗、山男など、神や精霊、妖怪の生きる異界が人々の身近にあったことを伝える伝承は古典となって生き続けている。研究の第一人者が霊異譚の背景にあるものと、都市伝説としての『遠野物語』を解き明かす。
目次
小盆地宇宙の構造
『遠野物語』の発刊
神々の呪縛
精霊の楽園
霊魂の執着
動物との共生
現代伝説の誕生
日本のグリムの偉業
童話への回路
祝福と鎮魂のテクスト
人類史学への提言
著者等紹介
石井正己[イシイマサミ]
1958年東京都生まれ。東京学芸大学教授、旅の文化研究所運営評議委員、遠野市立図書館顧問、遠野市立博物館顧問、遠野物語研究所研究主幹(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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翔亀
8
遠野物語・本編だけでなく、追加編の「拾遺」をかなり引用しながら、遠野物語を<分析>している。ちょうど「拾遺」に遠野物語・本編の生き生きとしたワクワク感がないのは何故か、と感じていたので、この本のような類型化して整理する<分析>のせいなのかもな、と妙に納得しまう。むしろ、遠野物語成立経緯や、粗削りながら佐々木喜善や宮沢賢治、折口信夫と遠野物語との関係史の方は興味深かった。なお、遠野物語入門としては↓をお勧め■83 http://book.akahoshitakuya.com/cmt/344502882013/12/31
iwasabi47
3
『遠野物語』成立・内容・経過など。作者の元本に興味をもつ。本書の目的から外れるが、佐々木の苦労がオミットされてるかな。なので佐々木の伝記が読みたくなる。2021/04/11
三柴ゆよし
3
近年の民俗学の動向をまるで把握していない箇所がいくつかあって、これには結構脱力した。たとえば、『遠野物語』は「遠野」という一地域に留まらず、「中央」を志向しているんだ! というあたり、著者の無邪気さがちょっと可愛くすらある。そのへんのことは、民俗学内ですでに腐るほど議論されている。フォーク・タームの書き換えにやたら肝要なのも、不可解といえば不可解だ。「かたり」の観光資源化に関する考えも古い。『後狩詞記』と『山の人生』がほとんど無視されているのも謎。この三冊はセットで読むが吉。2009/12/29
ちあき
3
タイトルどおりの新書。米山俊直の小盆地宇宙論にふれた序章から「昔」と「今」が交錯する広場としての『遠野物語』という視点を打ち出す最終章まで、一気に読ませる。ただし、全文じゃなくてもよいので、まず『遠野物語』を実際に読んでみてからこちらを手にとった方がいいと思う。世界は読みとく前にまず感じとらなくては。2009/05/26
潜水艦トロイメライ
2
遠野物語はただの怪談ではない。昔々ではなく実際の年号と場所と人物が詳細に付されているのだ。移りゆく時代の中で、東北だけが未開の地だったわけではなく、佐々木喜善の歴史認識と対応している?でもこれは民話なのか?よくわからない。2025/01/28