内容説明
凛とした生き方が読者を魅了してやまない幸田文。これはすべて、露伴の厳格なしつけの賜物であった。掃除、食事、身だしなみ、言葉遣い、性、死生観…。人としてのあり方までを徹底して理詰めで教えた父、反発しつつも必死に食い下がる娘。露伴が文に伝えた「美しい心」とは何か。
目次
理詰めで教える掃除の達人
父に向けた手厚い看護
反発しながらも畏敬の心
父は遊ばせ上手
最もおいしいときに食す
無言で育む美しい心
「わかる」とは「結ぶ」こと
形が人を美しく見せる
着物は着こなしにある
言葉遣いに厳しく
父と娘の性教育問答
夫婦の不和で傷つく子の心
男の子に甘い父心
生死の間に最後の教え
著者等紹介
橋本敏男[ハシモトトシオ]
1937年東京生まれ。62年読売新聞社に入社、主に婦人部(現・生活情報部)で教育・子どもに関する問題を担当。97年定年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kamakama
4
これは、親は子どもの上に君臨する存在だった戦前の親子関係だ。濃密で深い愛情は今だって変わりないが、その伝え方がまったくちがう。父露伴にこてんぱんにやりこめられ叱られながらも、そこからにじみ出てくる濃密な愛情を娘の文はしっかりと理解して受けとめている。同じ価値観を共有する二人だからこそだと感じた。現代のように移り変わりが早く価値観が共有できない親子関係では、こうはいくまい。学ぶところは多かったが、これをこのまま今にあてはめるのはどうだろうか。かなり無理があると思った。2011/01/29
ジャンズ
1
「いらないやつが生まれてきた」という言葉に驚いた。しかしそれを補って余りある良さを与えている。 だから文は父、露伴を敬愛できたのだろう。 教育は空気、動作、眼差し...様々なものによって育まれていくのであろう。言葉だけではない。 感受性は会得する、覚えるという教育だけでは育たない難しさがある。 父親露伴は見事にそれをやってのけた。 時代は変わっても普遍的なことはあると思った 2019/06/30
tsu55
1
露伴が文にどう躾け、それを文がどう受け止めたのかということから現代の子育てのありかたについて、考察している。 幼い頃に生母を亡くし、継母は家事に疎いという環境におかれた娘のために、ハタキや箒の使い方といった家事一般をはじめ、母親が娘に伝えるべき事柄を露伴みずからお手本を見せながら具体的、論理的に教えていく。 家族の絆が希薄になった現代の家庭とは違い、親と子が真摯に向かい合い子の成長を助けていく幸田家は愛情が濃密な愛情に包まれている感じがして、ちょっと羨ましい。
真珠郎
1
家事の一切を父に教えてもらうというのはなかなか珍しい状況だと思う。あれこれと口煩いだけでなく、露伴自身が完璧にこなせるのがすごい。子供との向き合い方がいい人だと思うので、私もしつけを受けてみたい…でも、かなり厳しそうなのでやっぱり遠慮したいかも。。2012/12/03
にょろ
1
父・幸田露伴が娘・文へどのような躾を行ったのか。厳しくも丁寧に接していた様子が引用された文からうかがえる。読んでて我が身を振り返った。2010/12/20