内容説明
被差別部落出身者であることに悩み、隠し、二十八歳にして「これこそオレが言いたかったことだ」と、初めて部落解放運動に目覚める。その後の解放運動の中で「糾弾屋」と呼ばれた著者が、山あり谷ありの自らの半生を振り返り、どのように試行錯誤してきたか、どのように部落解放運動と取り組んできたかを、次の世代の若い仲間に生き生きと伝える。
目次
第1章 記憶と意識
第2章 流浪と邂逅
第3章 差別と糾弾
第4章 教育と責任
第5章 米と肉
第6章 言葉と倫理
著者等紹介
山下力[ヤマシタツトム]
1941年大阪府生まれ。45年父の故郷・奈良県磯城郡三宅村上但馬に帰る。東京工業大学中退。69年、部落解放同盟上但馬支部結成に参加。72年より部落解放同盟奈良県連合会専従となり、書記長、副委員長、委員長を歴任。83年、奈良県議会議員に初当選。現在、奈良県議会議員(6期目)、奈良県部落解放同盟支部連合会委員長、民主党奈良県総支部連合会常任幹事
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感想・レビュー
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Kentaro
26
日本の国土は四季の変化がはっきりしており、雨も湿気も多いため、植物が繁茂しやすい。弥生時代に始まった稲作により、日本人は米を中心とした穀物を主食にして生きることを選択した。 牛馬が餌さとする穀物の量をそのまま人間が食べた方が肉食で賄えるエネルギーよりも効率が良いことを知っていたのだ。 しかし、天皇家や武士などの階級は肉食をやめてはいなかった。農工商には肉食を禁じる一方肉食をするためにと殺する人たちを世間から隔離する必要があった。よって、そうした隔離階層を作ってムラを形成させていったという説である。2019/06/26
香菜子(かなこ・Kanako)
17
被差別部落のわが半生。山下力先生の著書。被差別部落で生まれ育って、被差別部落問題に正面から取り組み、政治家として活躍された山下力先生による自叙伝。被差別部落出身者に対する差別は絶対に許されるべきではないし、そういった理由で差別をする人は人間として醜悪で最低最悪であるという自覚を持ってほしい。被差別部落問題は長年にわたってなかなか解消されていないけれど、今の子供世代が大人になるころには被差別部落問題が日本社会に存在していないことを願います。2018/07/12
majiro
16
著書は少なくても、著述は多かったのかな。スピード感をもって読める内容で、感情がこもっていて面白かった。この頃のウンドウというのは、それはもう大変なことだったと思うけれど、そして出版の背中を押したのが同志の死であったのもしんどい話であったけれど、しかし同時に悪友のすすめに導かれたというところが、まさに半生。おつかれさまでした!2017/02/04
羊の国のひつじ
8
被差別部落出身の著者が受けた差別やその差別と戦ってきた軌跡が描かれる。穢多非人がどのようにして生まれたか、在日朝鮮人への差別なども初めて知ることが多かった。部落問題はネットなどで書かれていると真実味が欠けていたり、どこまで本当なのかわからなかったりしたので読んでよかった。どの差別も自分より劣等の存在を自分の中で作ることで優越感を得る、それでしか自分を維持できない人がするものなんだと感じた。差別者にならないよう日頃の言葉の使い方に気をつけたい。そうするためには「知る」ことは大切だと再認識させられた。2018/10/03
アメヲトコ
4
奈良県の被差別部落で育ち、部落解放同盟の専従から県会議員になった著者の半生記。自らの差別経験のくだりは読んでいるこちらも憤りを覚えますが、糾弾闘争の行き過ぎへの反省も語る一方で、それに随伴した暴力については口を閉ざしているところにはややモヤモヤもします。2018/01/15