内容説明
古代の南九州には隼人と呼ばれる人びとがくらしていた。彼らは『古事記』『日本書紀』にも登場し、古くから知られていたが、ヤマトとは異なる社会の実態や、その系統などは謎につつまれている。北の蝦夷と同じく、しばしば中央政権に抗いながら、ついには同化されて歴史の表舞台から消えていった隼人の史実を追い、その文化や社会、律令体制の中での抵抗の姿、南島との関わりなどを明らかにする辺境の古代史。
目次
第1章 隼人前代の様相
第2章 クマソ、その実体は―虚構のなかの反逆者像
第3章 「隼人」の呼称はどこからきたか
第4章 天武・持統朝とハヤト
第5章 律令国家とハヤト二国の成立
第6章 天平期のハヤト支配
第7章 ハヤト国と南島世界
第8章 転換期のハヤト
第9章 日向神話とハヤト
著者等紹介
中村明蔵[ナカムラアキゾウ]
1935年福岡県生まれ。立命館大学大学院修士課程修了。ラ・サール高校教諭、鹿児島女子短期大学教授を経て、現在、鹿児島国際大学教授。博士(文学)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんさん
2
異民族、少数民族たる御先祖様たちの歴史。自分のルーツが気になるのは、初老に差しかかり死期が近いのを感じているからなのか笑。再読。2019/11/01
おらひらお
2
2001年初版。九州南部にいた隼人の歴史を概観したものです。若干ですが考古学の成果も取り込まれています。あと、神話についても、隼人関係といえる天孫降臨などは日本書紀成立期の政治状況が大きく影響していると指摘されています。2013/06/16
しいかあ
2
九州南部がいかにして律令体制に組み込まれてきたのかが書かれている。隼人に対して、当時の政府はエキゾチックな蛮族という見方をしていたみたい。でも、このあいだまで隼人は南方系民族とか大真面目に言ってる本もいっぱいあったくらいだし、今でもそういう見方は残っているのかも。実際問題、かつての九州南部は日本の辺境で、そこに住んでいた人々を弾圧しながらも日本という国に取り込んできた歴史があるということ。つうか、明らかに稲作に向かないとこで田んぼ作らせようとか、どんだけ頭が硬いのかと。2011/07/11
海辻
1
朝廷に押しつけられた班田収受法により、稲作に向かない土地で稲を作らされた7世紀のハヤトが痛ましかった。日本書紀等文献に記載される天皇の守衛としてのハヤトの役目が、吼え声による退魔というのも当時の為政者が未開地の人々をどう見ていたかわかる気がした。(図)2009/09/01
fuchsia
0
南薩摩と大隈は現在もかなり違ってそうですね。あと、西諸島や沖縄がこんな時代にすでに租税対象地域だったとは!2009/06/21