内容説明
熊を追うまだぎの装束、灼熱の炉から鉄をとり出すたたら着、僧の着る白衣、座敷で客を迎える女将の着物。かつての着物は、私たちの生活に深くかかわっていた。働き着、普段着としての〈衣〉にこだわり、伝統技術を受け継ぐ人びと。その貴重な声を紡いだ労作。伝統の技、日々の知恵。着物でたどる、日本人の暮らし。
目次
第1章 伝統の働き着(鵜匠―杉山秀夫さんの話;舳倉島の海女―木村ツキさんの話 ほか)
第2章 日常の中の着物(羽織袴で出勤―川那部浩哉さん(魚類生態学者)の話
手早く着て働く毎日―西郷槇子さん(隣花苑)の話 ほか)
第3章 着物の手入れと再生(相談相手は街の染物屋さん―志水和子さん(柳屋染物店)の話
仕立て直して再生―吉岡隆夫さん(おかや染物店)の話 ほか)
第4章 個性を表現する着物(美意識を凝集する紋―有賀昌美さん(紋章上絵師)の話
簡単な両面帯―松本松四さん(帯仕立屋)の話 ほか)
著者等紹介
原田紀子[ハラダノリコ]
1948年埼玉県生まれ。東京大学理学部卒業。国立科学博物館勤務。「国立科学博物館ニュース」の取材をきっかけに、伝統技術についての聞き書きをはじめる。伝統建築愛好会でもある「浦和宿けやきの会」主宰
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感想・レビュー
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nekozuki
11
本来、呉服だけではなく、それぞれの仕事や環境に合わせて着物はあった。今や生活は画一化・洋式化し着物は衰退の一途をたどっている。特に、本書に出てきた作業着のほとんどはすでに着る人がいなくなっているのではないか。ジーンズが鉱山労働者のためのものだったように、別の形で人々の生活に残っていってもいいと思う。その為には、着物の側でもある程度洋式のライフスタイルに順応していく必要があるのではないだろうか。2016/01/10
きゅうり
6
生活の中の着物。日本には色んな仕事があって、社会を支えてきた人たちがいた。そして、それに即した仕事着(着物)があった。鵜匠、海女、たたらの村下、またぎ、農家。着物が生活に近いものだった頃、人は自分の身の周りのものを自分でつくることが当たり前で、既製品なんて無いから着物はオーダーメイドだった。今は人件費が高くて、着物は贅沢品、といった感じだけど。ものを大事にする気持ちを、伝統文化とともに受け継ぎたい。簡単な繕い物をするところから始めようと思った。2015/07/27
Naota_t
1
『着物と日本人』とあり、“着物”に関する知識をつけられると思ったら、自分が期待していた“着物”ではなく、20世紀前半あたりで着られていた“着るもの”、主に普段着を扱った内容だった。 今では着物は“特別着”で、着るのに一々朝早く起きて美容院に行ったりするけれど、普段着として着物を着ていた当時の話を読むのは新鮮で、温故知新的な発見もあり参考になった。 ただ、動物の剥製があったり、科学実験が体験できたりする国立科学博物館のキュレーターが、何故民俗学的な本書を書いたんだろう。 2013/10/23
yukino
1
こういう本を読むと、日本は末端が頑張っている国なんだなぁと感じる。2012/05/21