内容説明
鳴り響くとともに消える音の記憶は、どのように歴史の語りになっていったのか。われわれが音楽の歴史を語る時、自明の前提にしている「西洋音楽史」という歴史の語りや、特定のレパートリーが繰り返し演奏されるといった「クラシック音楽」という文化の制度は、どのように作られてきたのか。本書では、音楽の歴史は、音楽そのものではなく、音楽を記録・伝達し、再現・評価し、選択・配列する社会の技術と制度である「メディア」によって形成されたという観点から、従来の「西洋音楽史」「クラシック音楽」というパラダイムを大胆に解体してみせ、音楽史研究の新しいパースペクティヴを提示する。
目次
第1部 音楽/歴史/メディア(“芸術”とは?―受容する“芸術”と“芸術的営為”;メディアとは?;音楽とメディアのさまざまな関係について;近代の歴史はメディアによって伝えられる)
第2部 ヨーロッパ“芸術”音楽と印刷楽譜メディア(記譜法の社会史;楽譜伝播のメカニズム;楽譜印刷と印刷楽譜)
第3部 クラシック“音楽メニュー”はどのようにして出来上がっていったか(楽譜カタログから見えてくるもの;「叢集・全集」の意味)
第4部 二〇世紀の音楽メディア革命(音楽産業;録音技術とディスク;LPとCD;音楽ビデオとLD)
第5部 クラシック音楽文化の根底を成すもの(“芸術”音楽鑑賞“メニュー”はどのようにして形成されたか;音楽史は音楽メディアによって創られる)
著者等紹介
大崎滋生[オオサキシゲミ]
1948年生まれ。現在、桐朋学園大学音楽学部教授
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