内容説明
マルクスのテキストは、彼の死とともに数奇な運命を歩み始める。「教典」にまで神格化された彼のテキストは、その保存と解釈をめぐって、多くの研究者・研究機関の栄光と悲惨を彩りながら、戦争と革命の世紀を生き延びる。学問と政治の狭間を激しく往還したマルクスのテキストを、世紀を越えて、もう一度学問として読み、思想として生かすことは可能なのだろうか。気鋭のマルクス研究者が、21世紀のマルクスの思想の可能性を問うために、マルクスのテキストが辿った道を、20世紀のマルクス研究の意味を探りながら振り返る。
目次
マルクスの死
エンゲルスの死と遺稿
ドイツ社会民主党とマルクスの遺稿
『マルクス伝』の著者フランツ・メーリング
『エンゲルス伝』の著者グスタフ・マイヤー
処刑された所長リャザノフ―マルクス・エンゲルス研究所
ハンス・シュタインとモスクワのドイツ人
ガブリエーレ・シュタンベルガーの思い出
社会民主党アルヒーフとアムステルダム社会史国際研究所
フランクフルト社会研究所
大原社会問題研究所―日本人と『マルクス・エンゲルス全集』
ソ連から追放されたニコラエフスキー
マルクスの出版社、ディーツ
マクシミリアン・リュベル
戦後のマルクス学の研究者たち
東ドイツのマルクス主義=レーニン主義研究所
マルクス・メモリアルとマルクス主義の覇権凍瘡
『マルクス・エンゲルス全集』と各国への普及