内容説明
本書は、クンデラの、短編群、『冗談』から最新作『ほんとうの私』にいたる長編、そして2冊の評論やインタビューを縦横・自在に横断し、「笑い」「性」「反抒情」「歴史」「越境」「キッチュ」「個人主義」といったクンデラ独特のテーマを鮮やかに読解していく。この思想的対話ともいうべき作業によって、現代人の行方を問うクンデラ文学の核心に迫った、著者会心の書き下ろし批評。
目次
第1章 笑いの現象学
第2章 性の心理学
第3章 ホモ・センティメンタリスとホモ・ポエティクス
第4章 歴史と(未)経験
第5章 境界の思考 越境の美学
第6章 キッチュと個人主義の行方
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
zirou1984
43
謎の表紙絵はなんとミラン・クンデラ直筆のもの。フランス語で出版された作品を翻訳してきた著者による、一連の作品の通底音に対する思考の補助線。クンデラの作品とは小説それ自体が雄弁なため、各作品の引用量が多くなってしまうのは仕方がないところだが、それらの言説をクンデラの生涯と対比させることで、言葉の外に示されている逆説的意図を炙りだすことに成功している。特に、ここでは彼自身が決して大きな声で語ろうとしない亡命作家としてのクンデラの立ち位置が示されているのが大きい。それは悲劇の、歴史の向こう側に位置する事なのだ。2014/09/27
三柴ゆよし
14
個別の作品論ではなく、あくまでクンデラ作品においてキーとなる思想概念の分析となる。扱われているのは処女作『冗談』から刊行時点での最新作『ほんとうの私』まで。思うにクンデラとは、あるひとつの概念に至る道程を読者に、だだ漏れ、開陳、共有させることで自らの虚構の形式を成立させていくボトムアップ式の作家である。そのため本書のような体裁の研究書の場合、それ、そのままクンデラが言ってるじゃん、となるのはある意味で必然といえ、あまり目新しい発見はなかった。とはいえ、これまで読んできた作品のおさらいにはちょうどよかった。2016/11/19
Happy Like a Honeybee
5
大国中心の歴史に対するルサンチマン。音楽的手法を取り入れたクンデラ氏の小説作法について掘り下げた一冊。 人生は一度きり。全てが直ちに初めて準備なしに経験される。 歴史も個人の人生と同じように、明日には消え去るように軽い存在だろうか。 傍目八目の諺のように、チェコ出身のクンデラ氏が欧州を俯瞰しているかもあいれない。2018/11/20
きのみ
3
クンデラを読んだことはないけれど。2014/09/03
やす
0
祖国を失ったことにより、小説家として生きていく最低条件の一つとして、亡命国の言語で再び作品を再構築していくことの壮絶な試み。ロマン主義の嘘からネオ・ナルシシズムまで、クンデラのいう抒情的・キッチュ的な概念の傾向を捉えること。クンデラの小説を読むときに手元に置いておきたい一冊。2015/12/30




