内容説明
幕府が鎖国体制を維持し日本人の海外渡航を防止するために洋式船の建造を禁止したという通説は根拠のないものである。幕府はただ西国大名の水軍力を抑制するために大船を没収したにすぎない。しかし幕末においては洋式船の建造禁止が幕府の祖法であるという認識は確固たるものとなっていた。広汎な史料の渉猟を通じてこの変遷の過程を明らかにし、3度にわたって延々と論議された異国船打払令復古評議の裏に秘められた文明観の対立を技術史的な観点から鮮やかに読み解く。
目次
第1章 鎖国と造船制限令
第2章 一八世紀末における異国船の導入
第3章 水野政権と蒸汽船
第4章 老中阿部正弘と洋式軍艦