内容説明
奉行の判断を鈍らせるとして、将軍家光は判例の編集を許さず、板倉重宗は愛宕の神を拝して法廷に臨み、茶を挽きつつ訴を聞き分けた時代から、老中松平定信の教令にもかかわらず、「御定書」が機械的に適用される時代へ、村が死刑・追放を行う時代から、妻敵討・無礼討が抑制される時代へ、庶民は「下手人」に復讐心を満足させつつ、架空の「大岡裁き」物語に衡平・個別を欲する願望を託し、幕藩刑事政策は、全国的規模で展開する。身分秩序がひとびとの生活・行動の範囲を義務の方向において画した時代の、法と刑罰の諸相。
目次
近世法
裁判の構造今昔―江戸の裁判
史実・江戸の罪と罰
日本刑罰夜話
下手人について―近世刑法史雑感
名古屋藩の追放刑
人足寄場の成立と変遷
東海の大名たち―幕藩体制
城下町の変貌―近世から近代へ
列藩巡歴
法と風流
法制史の学び方と文献案内