出版社内容情報
奄美の陋屋で死を迎え、このまま歴史の波間に埋没する運命にあった田中一村。異端の日本画家は死後いかにして見出されたか。その生前から下支えした無名の人たちの物語。
内容説明
奄美で一人死んでいった異才はいかに見出されたか。最晩年、彼の才能を発見し、下支えした“無名者”たちの物語。
目次
第1章 最後の帰郷
第2章 デラシネ三人組
第3章 幻の合同展
第4章 無名に死す
第5章 遺作展
第6章 あの魚、オレを殺しにかかってくる
第7章 飢え、我を駆る
第8章 甦る田中一村
著者等紹介
大野芳[オオノカオル]
1941年愛知県生まれ。ノンフィクション作家。『北針』で第一回潮賞ノンフィクション部門特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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慧の本箱
18
田中一村。画壇から遠く離れ、日本画の正道を探求し続けた孤高の画家。その一生は不遇だったが芸術家としての矜持に満ちていた。そんな田中一村と彼を支えた市井の人たちとの交流をノンフィクション作家大野芳が記した。 陶淵明の詩『乞食』より 飢来駆我去 不和竟何之 行行至斯里 叩門拙言辞 飢え来たりて我を駆りて去らしむ 竟(つい)に何(いず)くに之(ゆ)くかを知らず 行き行きて斯(こ)の里に至り 門を叩きて言辞拙(つたな)し 2021/01/27
Hiroki Nishizumi
4
一村の話は良かった。正直言ってこの著者はそれほど文章が上手とは思えない。しかしそれを補って余りある一村の深い言葉が心に刺さる。引用された文献に改めてあたりたい。2020/03/18
ひで
2
田中一村の名前を知ったのは、鹿児島の国分営業所に勤めていた時でした。出張のついでに美術館にも立ち寄りますたが、本書を読んで大変な苦労をされた琴を知りました。また、美術館に行きたくなりました。2020/07/29
のうみそしる
1
田中一村の生きざまと没後の反響を追ったノンフィクション。魁夷の『濤聲』に「波の音、聞こえますか? 水道の水が流れるていどの音はするでしょうが、とても雄渾な波音ではございません。これが日本を代表する画家と言えますでしょうか!」と息巻く炎メラメラなじいさん。一村の不遇と気概やデラシネ三人組のあたりはわくわくしながら読んだ。しかし後半、NHKやら新聞やら関わる人が多くなるにつれてメディアの偉大さを説かれているような気になってくる。それならもっと一村の話にページを割いてほしい。現実にはじまって幻想に届く。2023/08/27
mayumi
1
日曜美術館で田中一村の絵を見たときの衝撃と、どうしても直接みたいという、あせりにも似た気持ちを思い出した。 実際目にした時、会場内を何度も往復した。これほど惹かれた画家はこの人が始めてだった。 いつか奄美の美術館に行きたい。2020/06/25