出版社内容情報
昭和28年の死まで、折口信夫の生活と仕事を傍らで支えた「最後の弟子」が、95歳を前に、遺すべき思い出、精神的なつながりや稀有な体験を、精魂こめて綴った畢生の作。
内容説明
先生は、心の自由な人でした。吉田健一や柳田國男、小林秀雄らとの交流、宮中の仕事、沖縄への思い、口述筆記、顔の青痣…稀有な縁で、師の晩年に寄り添った“最後の弟子”が語る真実。
目次
草喰む猫
晩年の口述筆記
父母未生以前―師とわが祖の世と
折口春洋
小林秀雄
吉田健一
山本健吉
異境の家
宮中新年歌会始
沖縄と折口信夫
死神の足音を聞く時代
家の昔と、母の手紙
日本人の神
師の六十四年祭を終って
師と親の恩愛
最晩年の詩作
挽歌 春の塔
著者等紹介
岡野弘彦[オカノヒロヒコ]
1924年、三重県生まれ。歌人。國學院大學名誉教授。主な歌集に『天の鶴群』(読売文学賞)、『バグダッド燃ゆ』(現代短歌大賞、詩歌文学館賞)、主な著書に『折口信夫伝―その思想と学問』(和辻哲郎文化賞)などがある。また宮中と関わりが深く、昭和天皇をはじめ皇室の作歌指南役を務めてきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のり
15
人生の最大の宝物の一つに、師を持ち弟子となることが挙げられよう。恩師を持つ者は幸福者である。まして折口信夫という巨人を師に持ち実生活を共にしもした筆者・岡野弘彦のそれはなんと豊穣なものだったのか。その豊かさは本書の言葉から行間から匂い立つ。歌の激しさとのびやかさ、ぬくもりをも伝えるエピソードとそれを綴る文体。いま筆者が靖国神社と沖縄に触れたことにも留意したい。2019/10/28
紙狸
7
2019年7月刊行。筆者は90歳代半ばの歌人。書名にある師匠折口信夫の思い出だけでなく、自身の人生も回顧している。高齢の文人の記憶の表出の仕方が興味深かった。昭和23年に折口と吉田健一が出会い、意気投合した様を間近で目撃した者らしく生き生きと描写する。筆者自身、折口の弟子であるにとどまらず、歌人として活躍してきた。宮中の歌会始の選者や宮中和歌御用掛も務めたから、宮中と歌のかかわり合いついて詳しい。歌会始は戦後、現代らしい作品を入選させるように、改革されたのだった。 2019/09/14