出版社内容情報
子供も大人も精神の不調を抱える現代、自分とは違う「棲まい方」をしている他人の世界を知ることで、自身の「棲まい方」や生きづらさを相対的にとらえ、共生を目指す入門書。
内容説明
心の病気になった人はどんなふうに感じ、どんなことで困っているのか。心の病気を「わかる」ために。
目次
第1章 心の病気ってどういうもの?(どうやって心の病気をわかるの?;どうやって治すの?;これまでどんなふうに扱われてきたの?)
第2章 心の病気の人はどんなふうに困っているの?(頭のなかが騒がしい―統合失調症;何もする気が起きない―うつ病・何でもできそうな気がする―躁うつ病;イヤな記憶がよみがえる―PTSD;理由がわからない体の異常―転換性障害;手洗いがやめられない―強迫症・食べたくない・食べたらとまらない―摂食障害;他人が怖い―社交不安障害・心に関係した学校での困りごと―不登校・いじめ;変わった子どもと言われて;新しいことが覚えられない)
第3章 心の病気でもくらしやすい社会ってつくれるの?
著者等紹介
松本卓也[マツモトタクヤ]
1983年高知県生まれ。高知大学医学部卒業。自治医科大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科及び総合人間学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
47
中学生に向けられているようで、読むのは大人です。統合失調症、うつ病、躁うつ病、摂食障害、発達障害が平易な言葉で紹介されており、細かい議論よりも、大きな見取り図が手に入ります。得てして、新たな発見があります。ただ、中学生向けということで教育的な流れがあり、心の病の周辺の社会的な情報が簡潔にまとめられている点も有益です。それは我々大人にも必要だが、際どい内容のため、決して知識としては教わらない類のものです。例えば現在、50年以上精神病院に入院しているひとは1773人います。目的の中心は「治安維持」ですが、その2019/08/14
小鈴
25
「医療や福祉における悲惨は善意の顔してやってくる」ということです。人間の心には「正常な形」があって、病気の人の心を正常な形に整えることが治療においてもっとも大事だと思っている人は、そういうふうな治療を進めることが本人にとっていいことだと思っているのですが、それと相模原事件の犯人の思想と地続きです。あらかじめ自分の中に「正常な形」があって、ほかの人をその正常な形に近づけていくことが「正義」であるという考えは、相模原事件の犯人の思想とはっきり区別できるものではなく、両者にはたんなる量的な違いしかありません。2021/04/13
ほし
18
精神病理学などの研究者である松本卓也さんによる、心の病気について広く解説した一冊。中学生向けのシリーズということでとても分かりやすく、様々な症例の紹介だけに留まらず、当事者の方々の権利にも配慮されており、多くの人に勧められる一冊だと思います。この本で語られている症例としてはうつ病や統合失調症、PTSD、不登校や発達障害、認知症など。仮にこれらの病気の当事者でなくとも、周りに誰もそのような人がいないということはないのではと思います。「共感」の基盤には「知識」が必要である、という筆者の言葉に打たれました。2022/11/21
小鈴
18
「心の病気」(精神疾患、精神障害)について、今まで読んだ本の中で一番わかりやすく響きました。これ以上の本には出会えないかもしれないくらい心の病気について理解できるので多くの方に読まれてほしい。中学生向けですが広く読まれて欲しい。「病気それ自体がもっている『回復しようとする力』」があり、回復を阻害するものを減らすこととが重要。「回復する」ということは、前の状態とは違う形の生き方を手にいられるようになること。第1章の解説が秀逸ですが難しければ、第2章の各病気についてまとめたものから読んでみるとよいかも。2021/04/13
またの名
12
必ずマヤに紫のバラを届けてくれる『ガラスの仮面』の姿を現さない憧れの人を変なアダ名で呼んだら気持ち悪いおっさんストーカーに思えてくる名指しの効果が、いじめからユダヤ人虐殺まで機能するとか分析。教科書的な記述にとどまらずジスキネジアといった薬の副作用や儲け重視な製薬会社のキャンペーンによる過剰診断・過剰処方傾向、日本の精神科病床数の異常な多さや「使えない社員を炙り出す」ために病名が要請された等の暗部も、中学生が分かるレベルで説き明かす。道徳授業的な優しさと共感だけではむしろ危険と述べるラストの重みが良い。2019/10/25
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