内容説明
白楽天の名作の数々、知られざる詞の魅力。安史の乱後、唐代後半から宋代前半にかけて、詩や詞はどのように展開するのか?その種々相を、対話形式によって解き明かす。
目次
模索のとき
唐詩中興
ふみは文集
夕陽無限に好し
新たな時代へ
宋風確立
北宋中期
北宋後期
著者等紹介
宇野直人[ウノナオト]
昭和29年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。平成19年、NHKラジオ「古典講読―漢詩」講師、平成20年より同「漢詩を読む」講師
江原正士[エバラマサシ]
俳優・声優。5月4日生まれ。新劇を経て商業演劇の舞台や、トム・ハンクス、ウィル・スミス、エディ・マーフィ等の洋画吹替え、アニメの声優をはじめ各種のナレーションなどで活躍。フジテレビの深夜番組「二か国語」ではキャスターを8年間つとめた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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崩紫サロメ
15
中唐から北宋までを扱う。日本での人気から白居易が多めとなっているが、著者が専門とする北宋の柳永についての語りが熱くて面白い。おそらく日本では「雨霖鈴」くらいしか知られていないように思うが(少なくとも私は)、慢詩の確立者でもあり、中国では同時代から人気があり、小説や戯曲の主人公にもなっている。日本では訳されたことのない作品も多く紹介されており、他の有名な詩を紹介したパートとは違った面白さがある。2021/01/22
isao_key
7
3巻では唐代後半から宋代前半までの詩が紹介されている。中でも白居易と蘇軾が多く取り上げられる。白居易の詩は、字が易しく流れがいいのが特徴。新しい詩ができると必ず文字の読めないおばあさんに読んで聞かせ、分からないところは分かるまで書き直したという。また弱者へのまなざしも指摘されていて、戦争で徴兵されないために、大きな石で自分の腕の骨を折った老人の話が詩で歌われている。蘇軾の詩は、必ずどこか巧みな比喩が入ったり、芸術性を持った文人肌の印象を持つという。また料理も得意で東坡肉(トンポーロウ)の生みの親でもある。2015/05/15
きさらぎ
3
安史の乱以降、矛盾を孕みつつ存続し爛熟期を迎える唐王朝、その滅亡後の混乱期を経て宋へ。そして宋王朝が北部中国を逐われ、南宋が成立する直前までを扱う。社会的矛盾の中で、民衆への眼差しを持つ諷刺詩が作られ、漢民族の思想と価値観への復帰を目指す古文復興運動が興る。いよいよ白居易の「長恨歌」が出て来たり。王朝の混乱や「詞(歌詞)」の流行、印刷術の進歩など、様々な要因で生じた、宮廷文化の拡散、大衆文化との混交という文化の変容・新生の過程がとても面白い。また宋代の政治家・詩人たちの肖像が興味深く、魅力的だ。2015/07/26
Kenny00h
1
当時の社会的な背景を踏まえた解説がわかりやすくて面白い。 王建のわしゃまだまだ枯れとらんぞの「閑居即事」と、黄庭堅の魚を土産に子猫ちゃんをもらいにいきましょうって「乞猫」が好きだなー。2015/01/31
garyou
1
左遷されない人はゐないのか、と思ふくらゐ、みな左遷されてゐる(司馬光はされなかつたらしいけど、それでも職を辞したことがある)。多少の不遇は気にすることないつてことなのかな。でも今の世の中、一度流されたらなかなか戻つては来られないし、そもそも、ここに出てくるやうな人はみな優秀な人ばかりだし……などと、憂ひたりもする。この本では、さうした詩人の境遇がわからないと詩の鑑賞はむづかしいと云ふてゐる。でもそれはどうかな。さうとばかりは云へないと思ふのだが如何に。2013/03/05