内容説明
記憶、音、光、夢、風。文学にこれらの表現を探求する、試みのエッセイ集。
目次
水中花
杯中の蛇
琴の音
鐘をめぐる人々
古文書贋作者たち
植物園小景
魚になった話
風
色を聴き声を見る
俳句の東西交流史〔ほか〕
著者等紹介
鶴ヶ谷真一[ツルガヤシンイチ]
1946年東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業。著書に、『書を読んで羊を失う』(第48回日本エッセイスト・クラブ賞受賞、白水社。のち、増補して平凡社ライブラリー)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あきあかね
20
鶴ケ谷真一の随筆は、晩秋の空気のように淡く清雅でいて、上質なユーモアもあり、読むと心が落ち着いてくる。『月光に書を読む』『猫の目に時間を読む』『記憶の箱舟』など著者の作品は題名がどれも魅力的だが、本書も例に漏れず、夕映えや月光のような穏やかな微光が感じられる優美な題を持つ。 内容については、以前に読んだ『書を読んで羊を失う』と同様、書物にまつわる古今東西の逸話や奇譚にあふれている。 文学界も揺るがすシェイクスピアの恋文を創り出した男など古文書贋作者たちの系譜、『失われた時を求めて』の有名なマドレーヌの⇒2019/11/26
きりぱい
7
読書から広がる記憶の芋づるのようなエッセイ。「日本のイメージがいわば微光のように場景をあかるませているところが三カ所ほどあることに気がついた」と書かれるのは、『失われた時を求めて』(ここでは吉川和義訳)一巻目の話なのだけど、そういう紙背に感じるなにがしかの発見を読書で得る喜びのひとつだと言う。思いを巡らし、後漢の文人蔡邕(さいよう)や、贋作者たちや俳句など、ひとつのことから広がる関連する今昔のエピソードが面白い。タイトル共に「かすかな光が紙背を明るませる」という表現がとてもいいなあ。2011/08/21