内容説明
緑ゆたかな郊外からみつめた日々の出来事、水や草木や動物との対話、旅の発見。今に太古を、足下に宇宙を、静物に生と死をみる詩人の目、魂の言葉。現実と夢幻が交差する時空間。みずみずしく、宝玉のようなエッセイの園。
目次
1 神戸の東郊から(犬隠しの庭;川に水撒き ほか)
2 時のかけら(駅の迷宮;ぜんまい時計 ほか)
3 旅先から(トロツキーの最後の家;折り紙と太鼓判 ほか)
4 数えながら(百足退治いろいろ;牡丹狂い)
著者等紹介
多田智満子[タダチマコ]
1930年東京生まれ。詩人、エッセイスト
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感想・レビュー
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いやしの本棚
12
さらさらと読み終えた。なんて軽やかなエッセイだろう。『薔薇宇宙』の詩人のイメージとは違って、老いを受け容れた人ならではの明るんだ筆致。軽やかといっても、その中に惜しげもなく深い教養が散りばめられていて。『長い川のある國』から、いちばん好きな詩の引用もあって楽しかった。天の瑠璃で甕を満たす―。何度も引き合いに出してしまうけれど、片山廣子の『野に住みて』も明るいんだよね…「老いと死の受容」について考えさせられる。「星空を読み解く術も知らずして老ゆか万巻の書に囲まれて」(多田智満子『遊星の人』より)2017/10/22
雛橋
4
皆川博子さんの著書で引用された一文が凄く印象的で、引用されたものではないけどとりあえず読んでみた一冊。エッセイではあるけど語感が好き。アライグマのところには思うところあり。今現在のアライグマの侵略は凄いもの。とは思うものの、語りが美しくて読んでて心地好い。詩の方も入手したい。2020/07/23
ぞしま
4
詩人であり、あのユルスナールの訳者、硬質で豊穣な言語感覚…そんなイメージであっただけに、ほっこりした内容に呆気に取られた。安易なセンチメントに流されず、老いてなお一層みずみずしい感性、あんまり使いたくない言葉だけど、確かな美学に貫かれていて、唯一無二の存在感を放っている。2016/01/17
sukham
2
①ユルスナール(古典ギリシア語の詞華集の仏訳者でもある)の訳者(現代日本語の詩人でもある)ヲバ手づるに見つけた本。御二方とも古典ギリシア語に愛着があり相当入れ込んで居られる。②「鳥のことば」…Melampus(古代ギリシアの予言者)…Gautama Buddha, San Francesco d'Assisi などを想起した。③「蒼天の石」…lapis lazuli …❛あなたのかかえた土の瓷を 天の瑠璃で満たしなさい❜…中近東・アラビアの碧蒼青🌿高温多湿扶桑の❛あお❜トハ如何ほど異質ならんや?絶句陶然2022/02/12
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