出版社内容情報
ペルシアのイスラーム神秘主義を代表する詩人アッタールの書。さまざまな例話によって、神への愛と信仰のあるべき姿を王が王子たちに諭す。『鳥の言葉』の姉妹編。散文訳。
内容説明
ペルシア神秘主義文学を代表するアッタールの傑作。官能、名声、富、権力、超絶知などへの欲望を斥け、真理に至る神秘主義の道程へと導く、乞食から王侯まで多彩な人々の多様な物語。
目次
夫が旅に出てしまった高潔な女の物語
王子に懸想した女の話
ビザンツで捕らえられたアリーの末裔と学者と女男の話
ダーウード(ダビデ)の息子スライマーン(ソロモン)―彼らに平安あれ―と恋する蟻の話
信徒の長アリー―神よ、彼の存在を守りたまえ―と蟻の話
公正なヌーシールヴァーン王と年老いた農夫の話
師ジュンディーと犬の話
トゥースのマアシュークと犬、そして馬に乗った天使の話
老師アブー・サイードとスーフィーが犬をめぐって議論する話
アブー・アル・ファズル・ハサンが臨終の時に語った言葉の話〔ほか〕
著者等紹介
佐々木あや乃[ササキアヤノ]
1966年、平塚市生まれ。2003年、テヘラン大学人文学部博士号取得。現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授。専攻、ペルシア語・ペルシア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおにし
18
イスラーム神秘主義という言葉に魅かれて読んでみたが、ペルシャ国についての予備知識のない私には、ほとんどの物語が面白く感じられず途中で挫折してしまった。それでも、夫が不在中の美人妻が言い寄る男たちにひどい目にあわされても最後まで貞操を守り、彼女に奇跡が起きるという話と、なぜか錬金術で不老不死となったプラトンの変わり果てた姿にアレキサンダー大王ががっかりする話などが印象に残った。逸話によく登場するのはキリスト教や拝火教などの異教徒や狂人たち。女性の処女性や貞操に関する話題も多い。2019/11/30
roughfractus02
6
王族から乞食まで様々な階級の人々の逸話を多様な比喩を駆使して短い挿話(詩の散文訳)にまとめ、多数収録した本書は、イスラム神秘主義の核心を豊富な挿話と比喩を通して示唆する。王が真理への道を王子達に語るという枠を維持する本書は、その道が場所を指していないという自覚を王子と読者に促す。読み進めると、スーフィズム的な神は自らの内にあるというテーマが繰り返されるように思えてくる。作者はこの核心を比喩で語り、言葉の外に究極の意味として神を求める異教徒達を狂わせ、自らの貞操を守る女性を例に内なる実在を仄めかすのだろう。2022/09/02