内容説明
90年前、世界中で猛威をふるった史上最悪の感染症、スペイン・インフルエンザ。主に日本での流行を克明に記録した貴重な調査報告書。
目次
第1章 海外諸国に於ける既往の流行概況
第2章 我邦に於ける既往の流行概況
第3章 海外諸国に於ける今次の流行状況並予防措置
第4章 我邦に於ける今次の流行状況
第5章 我邦に於ける予防並救療施設
第6章 流行性感冒の病原、病理、症候、治療、予防
第8章 我邦に於ける流行性感冒に関する諸表
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
322
当時のスペイン風邪で政府がいかにウイルスに立ち向かっていったのかがよく分かる。100年前でもマスクつけろ。うがいしろ。くしゃみ咳はハンカチをおさえて。とか今でも言われる事が当時も推奨されていたのが印象的。あと横浜港の軍艦が日本で最初に発見された患者というのも今に繋がっているような宿命的なものを感じた。2020/04/20
keroppi
80
100年程前に世界的パンデミックとなったスペイン風邪。その詳細な記録だ。この本、4月30日まで平凡社のホームページで全文読むことが出来る。https://www.heibonsha.co.jp/files/tybk0778ss(1).pdf 実に緻密で、あの時代によくここまで記録出来たものだと思う。しかも、パンデミックへの対処の仕方は、今と一緒じゃないか。もっと、過去のことを振り返るべきだと思う。拾い読みでいいので、読んでみて欲しい。この時、終結するまで3年かかっている。人間は、進歩していると信じたい。2020/04/12
kei302
47
無料で公開されています。100年前の内務省衛生局による報告書に仙台医療センターの西村秀一先生が解説を付け2008年に出版された専門書。「忘れられた」パンデミックと呼ばれるスペイン風邪が、先の見えない今、注目されている。 東洋文庫 スペイン風邪で検索を。各県の情報が網羅されていて、あの時代に、どうやってと、編纂者の熱意が伝わってきます。そして、感染予防で心がけることは昔も今も変わっていない。警察が予防の最前線にいた。これは読んだことある。 2020/04/15
♪みどりpiyopiyo♪
46
パンデミック"スペイン風邪"の、主に日本での流行を克明に記録した貴重な調査報告書を読みました。冒頭の概論がすばらしい☆ ■インフルエンザウィルス発見(1933年)以前の1918年から1919年にかけての大流行。戦う武器も何もない大正期に、これだけの科学的思考と熱意。よくぞこれだけの記録を残そうとしたなぁ。地理的、経済的に異なる国(外交官からの外電)や県ごとの、また職業別の、流行の様子や とられた対策も詳細に。■大正時代の科学者とお役所の奮闘に拍手です✩⡱ 中島みゆきが聞こえてきそう!(2008年刊)(→続2020/04/30
ぷほは
5
新型コロナと比較されることの多い100年前のスペイン風邪。社会学の巨人であるマックス・ヴェーバーもこれで1920年に死んだ。そしてその100年後、新型コロナという新たなパンデミック下でこれを無料で閲覧することができる。当時の内務省衛生局の報告書で、近い管轄だった警察局と衛生局の連携が書かれ、他方で学校児童や軍事機密に触れる兵士たちの感染状況の記述はほぼない。ウェーバーの社会学理論は100経った今でも死んでない。危機を変革のチャンスと捉えず、むしろ冷静な判断のために過去から学ぶことが必要なタイミングだろう。2020/04/28