出版社内容情報
中世の寺院は仏道修行の場でもあり、漢籍などを修める学問の場でもあった。
その寺院に学問、修行のために預けられた稚児は高僧や僧侶たちの寵愛の対象となったばかりではなく、神仏の顕現として聖なる存在とも見なされていた。
その稚児と僧侶の恋愛模様を描いた「稚児物語」。
本書では11作品の現代語訳を収録。
【目次】
読む前に知っておきたい二、三のこと
秋の夜の長物語
あしびき
松帆浦物語
花みつ月みつ
鳥部山物語
幻夢物語
嵯峨物語
上野君消息
弁の草紙
稚児観音縁起
稚児之草紙
解説
内容説明
中世の寺院は仏道修行の場でもあり、漢籍などを修める学問の場でもあった。その寺院に学問、修行のために預けられた稚児は高僧や僧侶たちの寵愛の対象となったばかりではなく、神仏の顕現として聖なる存在とも見なされていた。その稚児と僧侶の恋愛模様を描いた「稚児物語」。本書では一一作品の現代語訳を収録。
著者等紹介
木村朗子[キムラサエコ]
1968年生まれ。津田塾大学学芸学部多文化・国際協力学科教授。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程修了。専門は、言語態分析、日本古典文学、日本文化研究、女性学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
62
若衆や稚児というのはあまり触れられないけど地下水の如く日本文化の中を確実に流れている。本書は中世の寺院に伝わる稚児と僧侶の恋愛物語をまとめた一冊。基本悲恋というか死に別れる話が中心なので、ある意味恋愛小説の王道を読んでいる心地さへする。物語の骨子というのは時代を超えるものなのですね。ただ一部を除いてどの話もそのパターンに沿っているので、多少マンネリを感じて飽きてくるのも事実だけれども。それと基本的に肉体関係以上に精神の繋がりを重視しているのだが、最後の「稚児之草紙」になって一気に生臭くなったのは笑えた。2025/09/03
❁Lei❁
16
満開の桜のもとに、ふと現れる美少年。あるときは夢で出会い、あるときは庭で垣間見して、僧侶は恋に落ちてしまいます。そんな少年たちはもっぱら短命です。彼らの死は、桜が散るのと同様に諸行無常を感じさせ、仏道を求めるきっかけになります。この儚く美しい雅やかな展開は、中古の王朝文学にも匹敵するほどだと感じました。男同士の恋もこんなに美しく描かれるのね……と読み進めていたのですが、ところがどっこい、最後に収録されている絵巻「稚児之草紙」には情事がモロに描かれています。中世の稚児文化を余すことなく楽しめる一冊でした。2025/04/21
月音
8
まさか、『秋の夜の長物語』や『あしびき』が現代語訳で読める日が来るとは。グー○ルやア○ゾンが地上になかったその昔、古典BLを読みたくても情報ナシ・本ナシ・訳ナシの三重苦だったのに…。収録作は11篇。美僧と美少年の悲恋、兄弟愛、怪談、師弟愛など、すべて仏教説話なので抹香臭さを覚悟せねばならない。上記2篇はその点あまり気にならず、ストーリーはすれ違い、嫉妬の悪だくみ、戦い、ファンタジー展開と、なかなかにスリリング。原文での初読時、なにより驚いたのが愛しあう二人を隔てる障害だった。⇒続2025/09/23
滝野暦
1
中世の物語あまりに展開が急すぎる。「それから数年」とかで年代が普通に飛んで、驚く。そこをもうちょっと詳しく読みたいよ、と思ってしまう。 こういう系統の現代語訳物語集はあまりないので、出版されて嬉しい。 ただ、自分に教養がなさすぎて価値観とかは理解できないとこもあった。勉強してからまた読み直したい。