出版社内容情報
1871年の「解放令」発布から現代にいたるまで、人々の意識に内面化され維持されてきた被差別部落の差別構造をていねいに解き明かす一冊。原著刊行後の動向を入れた増補版。
内容説明
一八七一年、近代国家建設に伴う国民統合のため、明治政府により布告された「解放令」。制度上では四民平等が謳われながらも、差別は人々の意識に内面化され、時代ごとに形を変え、現代まで根強く存続するに至る。差別はいかに再編され、維持されてきたのか―。原著刊行後の動向を増補し被差別部落をめぐる差別の構造をていねいに解き明かす通史決定版。
目次
第1章 近代国家の成立と再編される身分
第2章 帝国のなかの部落問題
第3章 解放か融和か
第4章 「国民一体」と人種主義の相克
第5章 戦後改革のなかで
第6章 「市民社会」への包摂から“いま”へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
OjohmbonX
4
明治以降の被差別部落の差別の歴史を概観すると、差別解消が一直線で進んでいったわけでは全く無いことがわかる。政府や自治体は、税収増や国際社会へのアピールに有効なら差別の解消を進めるし、人々の差別感情を利用した方が統治に有利なら差別を増長させる。差別解消を目的とした団体の方向性も、その時々の政府の方針と、それに呼応した世間の感情とも無縁ではなく、一枚岩ではいられない歴史があった。2024/05/05
knuuyy
2
とても面白い。私は差別についても部落問題についても無知で、驚きの連続。トランスジェンダーへのバッシングを機に差別とはなにかを考えはじめたが、部落史のなかに、LGBT差別と似た部分をみつけ身近に感じる。同情融和は理解増進に似ているように思うし、企業の損得で差別をやめたのもダイバーシティ政策に通じるし、差別者に迎合する当事者、差別などないとするマジョリティ、神政連事件など。部落問題は偉大な先輩だと感じた。日本での差別問題のありかたを知るうえで、部落の歴史を学ぶ必要性を感じている。2023/03/21