出版社内容情報
叔父の奸計により誘拐された主人公。船の難破に遭って生き延びるも、暗殺事件に巻き込まれ逃亡を余儀なくされる。その結末は!? 18世紀英国史を背景とする作家の最高傑作!
内容説明
父を失ったデイビッドが新たにその存在を知らされた叔父とは何者か。さらわれた少年は奴隷に売られてしまうのか。船内の戦闘をどうやって生き延びるのか。難破、孤立、突然の暗殺事件、強いられた逃亡…18世紀スコットランドの歴史を背景に、襲いくる危機、危難、災厄。スティーブンソンの最高傑作を新訳で。
著者等紹介
スティーブンソン,R.L.[スティーブンソン,R.L.] [Stevenson,Robert Louis]
1850‐94。スコットランド、エジンバラ生まれの小説家、詩人、エッセイスト。19世紀イギリスを代表する作家。『宝島』『ジキル博士とハイド氏』などは世界中で翻訳され読み継がれている
佐復秀樹[サマタヒデキ]
1952年群馬県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。イギリス演劇専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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帽子を編みます
64
あぁ、大きな地図を付けてください。切にそう思います。巻頭の小さな地図ではこの冒険の旅を辿れません、それが残念です。歴史冒険物語の傑作です。主人公デイビッドが父の死をきっかけに怪しい叔父を訪ねるところから長い旅が始まります。さらわれて船ヘ、破船、ゲール人の地を追われながら再度叔父と対決し財産を回復する。スコットランドでのジャコバイトの反乱を背景に、コリン・ロイの殺人事件を取り入れて波乱万丈な少年の成長、相棒との友情、さらわれた理由など見どころ充実の物語です。アランのその後は続編に続くようです。気になります。2022/01/13
たま
51
続編『カトリアナ』の翻訳が出たのでこちらを読んでみた。以前『さらわれたデービッド』なる題の訳を読み面白かったが(福音館だからリライトされていたのかも)、この本はスコットランド高地の地理と歴史が複雑なうえ、研究者的翻訳で読みにくい。もちろん主要登場人物のアラン・ブレックは素晴らしく、船上の戦いやバグパイプ競争が楽しい。スティーブンソンの描く人物はジョン・シルバーをはじめ本当に魅力的だと思う。そして結末の解放感と悲しさ。読者である私もアランのこれからを思い、歴史上人物である彼の幸運を祈ってしまうのである。2022/09/09
Э0!P!
6
オデュッセイアのごとき帰還を描く冒険譚だが、その過程でホイッグを敵視するジャコバイトの抵抗史を体感する傑作。2024/06/08
Hotspur
6
ロバート・L・スティーヴンソンの虚実織り交ぜた冒険物。18世紀半ばのジャコバイトをめぐる政治的騒乱が背景にあるが、これはフィールディング『トム・ジョーンズ』でも背景に使われていた。本作はプロット自体も充分に楽しめるが、一緒に逃走する主人公デイビッドとアラン・ブレックとの兄弟のような関係の他、なんと言っても作者のスコットランドに対する共感がもたらす地理、言語、風俗の描写が素晴らしい。特に氏族関係が重きをなすハイランド地方の社会慣習や、訳注の原綴に示されるゲール語の名残を残す地名など、読んでいて実に愉しい。2022/06/17
まどの一哉
3
恥ずかしながら英国史、スコットランド史を知らないのはもちろんなのだが、この作品の背景には名誉革命以降の反革命運動があり、ジャコバイトと呼ばれたその勢力の反乱と地下活動がある。 そしてスコットランド高地地方がイングランド合同後も基本的に合同には消極的で、カトリックであり現地語であるゲール語を使い、ケルト音楽を愛する土地柄であることが、この物語のスリリングな逃避行を成立させている。2021/11/17