出版社内容情報
その童話に、この作家が同時代の最先端の科学と共有したリアリズムの信念を確認しディープ・エコロジーとの思想的連関を描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
27
08年初出。賢治は、生涯を通して、広範にわたる想像力にとんだ、しかし厳密なまでに詳細な関心を、自然科学のさまざまな発見に対して保ちつづけた(29頁)。農民芸術は彼が、東北の農村から姿を現わす芸術的・社会的革命として思い描いたものの輪郭を描き説明する(35頁)。今日、里山の事実上の消滅は、田舎の過疎化傾向と合わさって、日本の田舎で野生生物の略奪行為をとりわけ激しいものにしている(175頁)。2015/07/28
ハチアカデミー
12
モダニズムという観点から、特にダーヴィンの学説が与えたインパクトを軸に、宮澤賢治のパースペクティブを読み解く。「人間の気づかない世界が実際に存在しており、それを描くことが可能だ」という点で、谷崎潤一郎、横光利一と賢治を論じた書籍の、賢治部分のみを抄訳した一冊。科学的な知識から、「波として伝わる電磁的エネルギーの一形態」として世界をみる視野を得ることで、自然も鉄道も「わたくしという現象」さえも描いた作家として賢治を描いている。読解のレベルでも得るものの多い一冊であった。「牛乳」と銀河、活版所の意図などなど。2014/10/13
大臣ぐサン
1
ディープエコロジーなどと言われると仰々しいが、賢治の思想はつくづく独創的だ。科学的であり精神的であり、宗教的であり、原始的でもある。正直、この西洋人の著者が『狼森と笊森、盗森』という賢治ファンでもなければ知らないようなマイナーな童話に目を付けたところは正直驚いた。この童話、原始的な自然と人間との交渉を描いた素晴らしい作品だ。『なめとこ山の熊』の狩人と熊の関係もやはり人間と自然の交渉である。そういった日本古来の思想を童話として完成させた宮沢賢治の感性。水木しげる大先生とも通じる。2018/12/17
めーてる
0
科学的な用語もバンバン出てくる、本物の文学論。でもなんとかついていけたし、賢治の描きたかったものや背景が見えて面白かった。2016/11/24
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