出版社内容情報
賢治作品の童話や詩の中から、とりわけ興趣深い物語の数々を選んで編む。『おばけずき』『百鬼園百物語』の続編となる第3弾。
内容説明
宮沢賢治の“常識”を覆す、幻視と恐怖と強迫観念に満ちた文豪小品シリーズ、第三弾。
著者等紹介
宮沢賢治[ミヤザワケンジ]
1896年、岩手県花巻市生まれ。県立盛岡中学校への進学以前より鉱物・植物の採集に熱中する。そのかたわら、短歌制作に励み、また宗教にも親しんだ。盛岡高等農林学校に進学、卒業後は、農業指導と創作を両立させる日々を送る。1924年、心象スケッチ『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を刊行、生前に出版された著作物はこの2点のみだった。1928年、農業指導に奔走する中で急性肺炎を発病、1933年没
東雅夫[ヒガシマサオ]
1958年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学文学部卒業。「幻想文学」編集長を経て、アンソロジスト、文芸評論家となる。現在「幽」編集長。著書に『遠野物語と怪談の時代』(角川選書、第64回日本推理作家協会賞受賞)ほかがある。また近年は児童書の監修も手掛け、ますます活躍の場を広げている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mocha
97
「怪異譚」というテーマで編まれた小品集。亡き妹の面影を探す詩、宗教の影響が色濃い話、遠野物語に通じる民話的なものなど…etc。怪談としての怖さはなかったが、幻覚が溢れるに任せたような作品には精神を病んでいくような怖さがある。帯に引用されている「幻想が向ふから追ってくるときはもうにんげんの壊れるときだ」という言葉が象徴的だ。解説にある賢治の怪異体験談の数々を読むと、やはりどこまでも繊細で鋭い感覚、自然と感応するアンテナを持っていた人なのだなと思った。2016/08/29
HANA
53
宮沢賢治の諸作品中から怪異をモチーフにした作品を集めたもの。宮沢賢治と怪異というと合っていないようだが、実際その通りで集められた作品も怪異というより幻視と言ったほうがぴったりするものばかり。それでもこうやってアンソロジーで読んでいると、宮沢賢治の新しい魅力を発見できそうな気がする。個人的には一時期狂ったように宮沢賢治を読んだ時期があり、ここに収められている作品もその当時読みふけったものが多い。その為幻視家としての宮沢賢治という視点からアンソロジーを組んでくれたのは実にありがたい。読むとやはり魅力的だしね。2014/07/22
藤月はな(灯れ松明の火)
52
最初、この本を見かけた時、「え、宮沢賢治がこのシリーズに?シビアでリリカルで寂しくて優しくのに・・・」と思っていました。でも思い返してみれば、この人の物語は誰の視点なのか、分からない語りや擬人化、山の怪などもあったのを再確認させられました。何度、読んでも異色過ぎる「毒もみの好きな署長さん」。無実な人が死罪になる前に「私が禁じていた毒もみをやっていたのは私だよ」と告白し、「毒もみ、大好き!」と宣言しちゃう署長さんの清々しさが妙な笑いを引き起こす。座敷童子については皆、見知った顔という記述に背筋がぞわっとする2017/10/16
あんこ
36
岩手県民としては馴染み深い宮沢賢治。こうしてあるテーマに沿って纏められたものを読んだのは初めてなので、こんな一面もあったのかと思いました。土着の幻想文学。怪談と一言で言うには何となく違う。幽霊の章、幻視の章が個人的に好きでした。美しさと儚さと、何処と無く漂う不安感のようなものを感じます。あとはやはり、宮沢賢治作品に出てくる会話文は訛りをそのまま書き出しているので安心します。2014/08/05
やいっち
33
幽霊がどうこうということより、賢治が幻視者だということが、東雅夫氏の編集による本書で知ることができた。彼による解説も非常に参考になった。「永訣の朝」では、兄賢治の妹へのひたすらな思いが表現されているようである。 一方、「手紙 四」では、まるでその舞台裏を明かすかのように、実は兄は普段から小さな妹に意地悪ばかりしていた。その妹が俄かに病気になり、兄は自分のせいで妹が病気になったとばかり、罪の意識に駆られて、「雨雪とって来てやろか」病床の妹に語りかけるのだ。2018/08/01