出版社内容情報
抗日、内戦、文革、改革・解放、姦通、略奪、身売り、死姦――激動の現代中国史を背景に描く、乳房に取り憑かれた主人公とその母、そして8人の姉たちの数奇・摩訶不思議な運命模様。
内容説明
わたしの本のどれか一冊だけでわたしの文学の風格をお分かりになりたかったら、『豊乳肥臀』をお読みいただきたい―構想十年、執筆九十日。母の死後、一気呵成に書き上げられた、ノーベル文学賞作家渾身の大傑作。これぞ中国!これぞ文学!
著者等紹介
莫言[モオイエン]
1955年2月、山東省高密県の農民の子として生まれる。幼少年期に文革に遭い、生まれた村で労働のかたわら、兄の教科書や旧小説で、文学に目覚める。76年に人民解放軍に入隊、81年頃から創作を始める。85年に『透明な赤蕪』で文壇にデビュー。翌86年、『紅いコーリャン』で、中国農民の原始的生命力を描いて、不動の地位を確立。97年、人民解放軍を除隊、検察日報に移り、2007年文化部中国芸術研究院へ移る。2012年、ノーベル文学賞を受賞
吉田富夫[ヨシダトミオ]
1935年、広島県生まれ。63年、京都大学大学院修了。中国現代文学専攻。佛教大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
25
影響を受けた作家として名の上がったトルストイは、一瞬、意外の感もあったが、当然ながら挙げるべき作家だと納得した。 本書『豊乳肥臀』は、誰かが言っていたように思うのだが、現代版且つ中国版(いうまでもなく莫 言版)の「戦争と平和」なのである。カフカ的な不条理もたっぷり過ぎるほど書き込まれている。 但し、カフカ的寡黙さは、欠片も見いだせない。ひたすら喧騒の場面と言動の連続である。 2018/05/06
nbhd
11
講談調でクセっ気のある「白檀の刑」や「蛙鳴」の素朴なおじさんの語りにくらべると、だいたいが三人称のこの小説はちょっと物足りないかんじもしている。『女の顔などという七面倒くさいものは、まるで見る気がなかった。乳房を見れば、顔を見たも同然なのだ。乳首を銜えるとは、その魂を掴むことなのだ。』。もっともっとこういうおっぱいの描写ほしかったな。2015/09/22
メルコ
10
後半では文化大革命等の辛い時代を生き抜き死姦の罪で服役し、やがてブラジャーの会社社長に就任する主人公の姿を描いていく。前半の混沌とした状態から、主人公は大人になり舞台も現代に近づいて物語への親しみも増す。7人の姉の出生の秘密も明らかになり壮大な物語も大団円を迎える。その天衣無縫な内容から本国では発禁になったというが、これほど中国近現代史を大胆に描いてみせているところは他に類を見ないのではないか。タイトルにも表れいる母性讃歌が高らかに響いている。波乱に満ちた様々な登場人物の最期のときまで描いているのも、→2024/03/26
荒野の狼
9
下巻は第5章から断章までと、巻末に莫言による9ページの「高密県東北郷の聖書-日本の読者へ」と8ページの訳者あとがきを収録。莫言は「二十世紀の末ともなれば、良心と抱負を抱いた作家は、二度とある階級やある政党のラッパ手や狙撃手になるべきでなく、より高い立場からより遠くを見るべきだ」と書いている。2021/07/17
イシザル
7
「共産党お抱えの詩人」のレッテルを貼られようが、書きたいものを書く。党を批判するときは、圧巻の筆力で物語る。「文句あるなら、イデオロギー語るなら、これで表現してみろ」っと漢(オトコ)気が伝わってくる。 でも最後も おっぱいで締める「エエ話やったのに最後 おっぱいって 下品やわー」つこっみ処を作って締める 流石お見事。2018/02/02