出版社内容情報
はんなり、もっさり、いけず、しょうもない…。したたかで繊細、一筋縄ではいかない京都人の物言い。その精神を、京都で生まれ育った作家が軽妙に解き明かす。 解説=酒井順子
内容説明
はんなり、もっさり、いけず、しょうもない…。響きは柔らかいけれど、「よそさん」には理解が難しくて恐ろしい、京都人の物言い。繊細でありながらしたたか、そんな京の「批評語」には、相手との「位取り」で負けないための京都人の知恵が詰まっている。その精神を、京都で生まれ育った作家が軽妙に説き明かす。増補決定版。
目次
京のわる口(前口上で「ごめんやす」;「うるさい」の値打ち;「自由が利く」なら;「ほどらい」は「えぇ加減」に;「えぇように…」しぃ・する・される ほか)
京ことば談義(京言葉と女文化;京都言葉、所詮は友情が泣く位取り;京の話術―うそとわる口の文化;京ことばと京根性)
著者等紹介
秦恒平[ハタコウヘイ]
1935年、京都市生まれ。作家。同志社大学文学部卒業。1969年、『清経入水』で第5回太宰治賞を受賞。東京工業大学教授、日本ペンクラブ理事などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
29
京都への悪口集、ではなく京都弁での批評語、褒め言葉、悪口等を解説している一冊。ここでは京都弁を読み解くキーワードが「位取り」とされていて、会話はあくまで相手との位置にこだわるためのものとされているのだが。それが京都人の日常なら怖すぎるだろう。彼らは毎回このような白刃を真綿に包んだような言葉でやり取りしているのだろうか。日本語のどことなくぼんやりとしていて真意を掴ませない部分があるとすれば、ここの京都弁はそれの最たるもの。常に裏の裏まで考える会話を想像すると、それだけでまた京都人が怖くなってしまうのだった。2012/12/27
芍薬
7
慌てて旅行前に読んでた一冊。当たり前ですが一文字異なるだけでニュアンスが変わってしまうのですね。 言葉の雰囲気は目に見えないだけにかなり伝わり難く、使用したことのない者には益々難しいです。私の思う“はんなり”の雰囲気は間違っていた様です。どうやらもっと華やかな様子?2013/01/30
kobbanova
2
文庫で再刊されました。おっとり優しげと誤解されがちな京言葉を「位取り」をキーに読み解く、その鮮やかさにいちいち頷いてしまいます。京都市民以外にどれだけ理解可能か微妙な気もしますが。白眉は、「源氏物語」と「枕草子」を現在の京言葉で訳した京ことば談義。ただ単語の分析に終わらず、文化論としてこれまた鮮やかに胸にこたえます。2012/10/22
コノヒト
1
独特の癖の強い文章だった。執筆出版当時から30年ほど経っている現今では京ことば事情にいささかの変化があるようにも思う。「源氏物語」や「枕草子」は上方イントネーションで読まれて然るべきだとは常々考えていた。2015/11/05
あだこ
1
今では、だいたいのひとが話す関西弁は丁寧な言葉使いをしようとにすると途端に標準語になってしまうような気がする。昔ながらの京ことばは、パッと聞いた(見た)限りではおっとりとしたように感じるが、その実したたかな批評的な含意を持っていた。来客におっとりとお茶漬けを出すような「京都人」を方言の面からみてみた本。2013/01/16