内容説明
文学史に埋もれた伊達男兼殺人文筆家に光を当て、アヘンが文学に与えた影響をあざやかにひもとく。ターナー晩年の絵画のすばらしさを再評価し、詩人哲学者・コールリッジとユートピアを夢見る。ワーズワースとゴヤの奇妙な同時代的交差を論じ、イギリスの恐怖伝奇小説の系譜をたどる。そして、ロマン派の音楽家たちをお祭り男と賞賛する。澁澤龍彦、種村季弘と並び称される「脱領域」の知性が遺した最初の著作、待望の再刊。
目次
類比の森の殺人
夢のフーガ
衆魔と夢魔
四元素詩学―絵具の言葉
自然状態の神話
サスケハナ計画
ランターズ談義
ベーメとブレイク
啓示とユートピア
ゴヤとワーズワス
幻想の地下水脈
ヘルマフロディストの詩学
ミミズク舌代
悪夢の画家―ヨーハン・ハインリッヒ・フュースリ
イギリス絵画漫歩
伝奇と狂気
ゴシック風土
ヴィクトリア時代の夜
ロマン派音楽談義―ミメーシスを遠くはなれて
著者等紹介
由良君美[ユラキミヨシ]
英文学者。1929年京都市生まれ。学習院大学哲学科、英米文学科卒。慶應義塾大学大学院英米文学専攻修士課程修了。慶應義塾大学助教授、東京大学教授などを経て、東京大学名誉教授。専門はコールリッジを中心とした英国ロマン派文学であるが、言語学、比較文学はもとより、オカルト、サブカルチャーとその守備範囲は広い。詩と本とパイプとウィスキーを愛し、自らをみみずくになぞらえた。1990年歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
30
イギリス浪漫派文学の紹介。「すこしイギリス文学を面白いものにしてみよう」の書き出しに違わず、次から次へと出てくる作品名やそれに関する解説、果ては社会の影響まで手品のように話題が繰り出されてきて、息をつく間も与えられない。コールリッジは「老水夫行」の作者、ブレイクは「エルサレム」の作者くらいしか知らない僕のような人間にとっては、この知識量は圧倒的すぎて目眩すら覚える気分。ブレイクと清教徒革命とかコールリッジがアメリカに理想郷を作ろうとした話等どこを読んでも面白い。ゴシックの受容については隔世の感があるなあ。2012/11/07
白義
16
文学史の公式の中に囚われたロマン主義を解き放ち、革命の時代と共にあり強烈な幻想と神秘、ユートピアへの希求に満ちた巨大な精神と観念史のムーブメントとしてそのラディカルな真の姿を明らかにした記念碑的な一冊。18世紀末から19世紀の社会をまるで見てきたようにその猥雑な熱気まで含めて描く筆力、当時のサブカルチャーとも言えるベストセラー「オシアンの唄」といった多くの意外な文献、ウェインライトやプリーストリーといった意外な人物を駆使した博識、本書の登場と著者の活躍は文学研究に新しい風を間違いなく持ち込んだと言っていい2018/07/18
ハチアカデミー
13
B 木菟先生による知のアラベスク。イギリスの文学、絵画、音楽、歴史など学術横断的内容は今なお刺激的。本書で言及された幾つかの書籍が、現在では邦訳されていることが氏の何よりの功績であろう。闇を開くような筆致に胸が躍るが、発表時の興奮を味わえないのが恨めしい。とかく多彩な日本の翻訳文化の背景には、著者のように、良いものは良いと紹介してきた読書人(あえて研究者とはいわない)の戦いがあったのだ。イギリスのゴシック小説と日本の大衆幻想文学を結びつける「伝奇と狂気」が特に良し。この内容で索引が無いのはやや不便か。2012/08/07
EnJoeToh
8
読もうよ。2012/07/15
苺畑序音
7
これは読むべきです。2017/03/11