内容説明
ハチやイナゴやザザムシはもちろん、セミ、アリ、タガメ、カブトムシにカミキリムシ…幼虫や蛹や成虫を、そのまま、あるいは調理して、日本で、中国で、アジア各地で、オセアニア、アメリカ、アフリカのあちこちで。人間は虫を食べてきて、いまも食べて暮らしている。そのさまざまな、虫を食べるふつうの暮らしを知るとき、自然に対するこわばりがゆっくりとける。名著の再刊。
目次
第1章 人はなぜ虫を食べるか
第2章 虫の食べ方
第3章 日本の昆虫食
第4章 グルメの国、中国の昆虫食
第5章 熱いアジアの昆虫食
第6章 オーストラリアとオセアニア諸島の昆虫食
第7章 アメリカおよびヨーロッパの昆虫食
第8章 アフリカの昆虫食
第9章 虫の栄養
第10章 これからの昆虫食
著者等紹介
三橋淳[ミツハシジュン]
1932年生まれ。東京大学農学部卒業。農学博士。農林省農業技術研究所、林業試験場、東京農工大学農学部教授、東京農業大学バイオサイエンス学科教授を経て、現在フリーの昆虫研究者、農学アカデミー会員。昆虫生理学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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YO)))
10
タイトル通り、世界各国の食虫習俗を広く紹介する一冊。所謂「いかもの食い」ではなく、各地域の住民に日常的に食べられているもの、或いは市場に流通しているものを取り上げることで、タンパク資源としての昆虫の有用性にマジメに迫っている。中国、タイ、メキシコ、アフリカ諸国などの「食虫大国」では、実に多種多量の昆虫が食卓に供されていて目を見張った。一般に、経済成長・先進国化とともに食虫は廃れる傾向にあるらしいが、向後、来るべき人口飽和・食資源不足の世界では、昆虫は有効な未来食になり得る、のかもしれない。2012/08/12
CTC
5
97年単行本初版、現在は平凡社ライブラリー収録。東大農学博士らの雑誌連載を纏めたもの。世界各地の500種にも及ぶ(うち300種がメキシコだそう)昆虫食の実情を観る。そもそも古代、昆虫は人類の主食だった形跡が濃厚らしいが、現在その地位は大変低い。これはもっと“旨い”タンパク源を活用できるようになったからだろうが、西洋では「虫は汚らわしいもので、その死体に触れても汚れる」と聖書に記された事が大きいようだ。実食事例や食味の記載も多数ながら…面白いのは先生方にイカモノ食いの趣味がなく大真面目な事。良書です。2016/07/14
tom
4
昆虫は将来の食料源ということで書かれた本。良質のタンパク質と脂質が体のほとんどを占めているとのこと。焼いたり揚げたり、煮たり粉にしたりと調理法もいろいろと書いている。食感はほくほくとしていて甘いらしい。でもねえ、日本では、中国では、東南アジアでは、アフリカではといろいろな地域の昆虫食を書いているのだけど、いずこも同じような調理法ばかりで、食味がみえてこないのですよ。きっと著者も自分で昆虫食を堪能してるわけではないよねと、妙な推測をして読了の本でした。2012/08/01
のりまき せんべい
3
「今は故人なるが、葺屋町川岸に荒物商売する田村屋只四郎と云者あり。異人にて、諸蟲何と云うこともなく取り喰ふ。蛇、蛙、蚯蚓を始め、皆生ながら喰ふ。大小の諸蟲かく為ざるは無し。常に人は戒て曰。蚰蜒ハサミムシ(原文漢字)は食すること勿れ。必ず毒ありと。年六十を過て終れり。」 他人に戒めるといっても。ご本人以外にゲジやハサミムシを食べるような人がいたとも思えないのだが、誰に戒めたのだろうか?p41 筆者の冷静かつ最もなツッコミにひとしきりウケた。2012/08/01
三谷銀屋
2
日本と世界の昆虫食文化をざっくり俯瞰できる。食用昆虫を繁殖させたり大量に捕まえて市場に流通させたりする例ももちろんあるのだけど、それよりも昆虫食の基本は、人々が農作業や山仕事の合間にそこら辺の虫を捕って気軽におやつとして食べたりすることにあるようだった。アフリカ等では子供達も含めて家族や村をあげてシロアリやイモムシを採取して食べることが栄養摂取だけでなくレクリエーション的な楽しみにもなっている。ただ食べて味わうだけでなく採取することも含めて昆虫食は魅力ある文化のように思えた。食文化の奥深さが垣間見れる本。2023/03/24